91話 27日。
91話 27日。
その後、悪徳貴族が、ラストローズ辺境伯に、
『このクソ奴隷が勝手に持ち場を離れたせいで、私はこんな目に! 辺境伯、このゴミに、処罰をあたえなさい!!』
と、泣きついたが、
その態度が、あまりにあまりにもだったため、
『……子爵ふぜいが……誰に口をきいている?』
ここで、また切れてしまったことを、ラストローズ辺境伯は、のちに反省することになる……が、しかし、疲労と責任感で一杯一杯の人間に、モンスタークレームをかます方が悪いだろう。
その悪徳貴族の悪事の証拠はそろっているので、
ラストローズ辺境伯は、そのまま、そのバカを処分した。
――身分剥奪の上、奴隷堕ちという厳しい処遇。
『も、申し訳ありません、ラストローズ辺境伯!! どうか、お許しください! 奴隷堕ちなど、それは、流石にあんまりでございます! どうか、どうか!』
必死に懇願するバカ奴隷に、
ラストローズ辺境伯は、とことん冷めた目で、
『首をはねられなかっただけ、ありがたく思うように』
そう言い捨てた。
ラストローズ辺境伯は、平常時では、常に冷静で高潔で清廉な男だが、『ダークサイドに落ちる可能性がないわけでもない』という、微妙な危うさも持ち合わせている。
★
『27日』の夜。
バカが奴隷堕ちして以降も、次々に貴族が狙われた。
この日だけで、8人ものの貴族が襲われたのだ。
『17番の護衛対象』以外は、正直どうでもよかったのだが、
17番が守っている貴族ばかりを狙うのは流石にバカすぎるので、
アバターラは、テキトーな貴族を、まぶすように襲っていく。
17番の護衛対象以外は全滅したが、
17番だけは、アバターラから貴族を守り切った……
ということで、魔王討伐隊の中での地位がほんの少しだけ上がった。
そんな17番大活躍の報告を受けて、
またラストローズ辺境伯は、17番のことを怪しみだす。
17番は、とにかく、ずっと、怪しい。
魔王事件が初めて起きた時から、なんだかんだ、ずっと関与し続けている。
『魔王事件が起きて以降、17番はずっと、とんとん拍子で出世している。……ほんの数日前まで、なんの力もなかった奴隷が……今では大星祭の優勝者で、魔王討伐隊の中でも輝かしい成績を収めている。こんなことがありえるだろうか……』
疑い始めると、全てが怪しく見えてくる。
『実行犯は、間違いなく魔王使いのアバターラ。それは、この目で見たから間違いない。ただ、アバターラを隠れ蓑にして、実は17番が黒幕という可能性も……まったくゼロではない……』
ただ、結局、証拠が何もない。
だから、ずっと、平行線。




