90話 マッチポンプ大好き!
90話 マッチポンプ大好き!
複数のチームに分かれて、複数の貴族を護衛し、魔王使いのアバターラが襲ってきた際には撃退する。
……という、非常にシンプルなミッション。
――ラストローズから、護衛対象の情報を聞いている際、17番に電流走る。
(ボクが護衛する貴族を、アバターラに襲ってもらって……で、ボクがなんとか守ったということにすれば……評価がうなぎのぼりになるんじゃない?)
さっそくその作戦を実行にうつす17番。
アバターラも、特に反対する理由はないようで、快く、今回の作戦を受けてくれた。
そして、始まった、マッチポンプ護衛ミッション。
17番は、自分の護衛対象を無傷で守り切ることで、己の評判を上げようと思っていたのだが、
『貴様……平民には見えないな。奴隷の中でも、特に使えない奴隷の顔をしている』
『いや、でも、ボク、結構使えますよ。この前の大星祭で優勝していますし』
『平民同士の殴り合いに興味がないので、まったく見ていないが……貴様が優勝したということは、その程度の大会だったということだろう。貴様のようなゴミに護衛を頼むほど、私は落ちぶれてはいない。失せろ』
『はーい。では、目障りにならないよう、離れたところから護衛しまーす』
『耳と頭が悪いようだ。失せろと言っている。人の言葉が分かるか、人面猿よ』
貴族の態度にイラっとしたので、
17番は、
『わかりましたー』
と簡易に返事をした上で、
アバターラに、マパネット経由で合図を出す。
予定通り、貴族を襲いにきたアバターラ。
その圧倒的な力を前に、悪徳貴族は、すぐさま、
『護衛の奴隷! バカ猿ぅ! どこで何をしている! 私を守ぶべぇええ!!』
必死に17番を呼ぶ悪徳貴族。
17番は、『アバターラが悪徳貴族をボコボコにできるだけの時間』を確保してから、
『どうしました! 何かありましたか?!』
必死にダッシュしてきた風を装いつつ、
汗をぬぐうポーズをとりながら、
『ちなみに、ボクは、奴隷ではなく平民ですので、そこのところ、お間違えないよう』
と、注釈をいれた上で、アバターラとの戦闘にはいった。
戦闘といっても、
『立ち合いは強く当たって、あとは流れで~』
のパターンなので、ぶっちゃけ、お遊戯会みたいなもの。
ケガがないと不自然なので、
ある程度、アバターラにボコってもらって、あとはもう、軽く流しておしまい。
捨て台詞を残して去っていくアバターラ。
ボコボコになりながら貴族を守った17番。
17番の3倍ぐらいボコボコになっている貴族。
――すべては17番のシナリオ通り。




