89話 認めたくないものだな、自分自身の、若さ故の過ちというものを。
89話 認めたくないものだな、自分自身の、若さ故の過ちというものを。
結果、どの貴族も黙りこくる。
文句を口にする貴族(政治家)なんてそんなもの。
本当に責任感がある者は、口ではなく手と足を動かす。
結局のところ、貴族連中は、不安を叫んでいるだけで、
『優秀なラストローズ辺境伯でも解決できない問題』を、
『自分達に解決できるわけがない』と理解している。
ついキレてしまったラストローズ辺境伯は、
直属の上司であり恩師でもある『パメラノコット公爵』から、
『その程度でキレるな。みっともない。現実から逃げるな。抗え。それが、真に人の上にたつ者の、最低限の責務じゃ』
と叱りつけられた。
若くして辺境伯の地位についた優秀な若者に、過剰な期待を寄せているパメラノコット。
その期待に、どうにか応えようと、常に無理をし続けているラストローズ。
両者の関係性は、はたから見る分には、あまりいいもののようには見えなかった。
今にも崩れそうな砂の塔とでも言おうか……
2人の『上』に、『絶対的な忠誠を誓える共通の王』でもいれば、話は違うのだろうけれど、今のところ、そんな存在はいないので、二人の関係性は危ういまま。
このままだと、いつか瓦解するだろう。
叱られたラストローズは、深く反省した上で、
痛む胃をおさえながら、また激務に戻る。
ラストローズは、色々と考え抜いた末に、
配下の『蝙蝠の7番』を呼び出し、
『社会的な視点はいったん置いておいて……人道的観点から、【悪】だと認定できる貴族をリストアップしてくれ』
シノビとして、裏社会に精通している7番は、すぐさま、命令通りにリストを作成。
ラストローズは、資料を確認しつつ、
(この、悪徳貴族たちを護衛するという形で、網をはる……気分のいい仕事ではないが、いつどこに現れるか分からない神出鬼没の魔王使いを相手にする以上、手段は選んでいられない……)
苦渋の選択に溺れ続ける毎日。
『この苦しい日々が、私の魂を磨いているのだ』……と、信じて、ラストローズは今日も、都市内部を駆けずり回る。
ちなみに、今回、貴族が狙われたことで、魔王使いのアバターラの報奨金が10億から15億にアップした。
どこぞの海賊よりも爆速で上がっていく懸賞金。
まだまだ止まらない。
アバターラの脅威が都市を揺るがすのは、まだまだここから。
★
『26日』の朝。
魔王討伐隊の面々は、ラストローズ辺境伯に集められ、
『これから貴族を護衛する任務を行う』とミッションを言い渡される。




