87話 勝つ気のない17番。
87話 勝つ気のない17番。
準決勝まで勝ち進めば、確実にSランクに食い込める。
そうなれば、あとは、ちょっと魔王討伐隊で職務を頑張るだけでも貴族になれる……はず。
――大星祭本戦は、
外周代表8人、
中周代表8人、
内周代表8人、
――合計24人のトーナメント。
(……優勝の1億はめちゃくちゃ魅力的だけど……流石に目立ちすぎるからね。4位の1000万で我慢するよ。いやぁ、ボクも贅沢になったもんだ。はっはっは)
本戦の相手は、それぞれのエリアの代表なので、
当然、ザコなんて一人もおらず、みな、かなりの強者だったが、
『そこまで! 勝者は、外周西南西代表、猿の17番!!』
17番は、丁寧に死闘を演じながら、問題なく順調に勝ち上がり、準決勝までサクっとコマを進めた。
と、ここで問題が起きた。
準決勝で負けるつもりでいたのだが……相手がガチの体調不良で不戦敗になってしまったのだ。
どうやら、一つ前の試合で無理をしすぎたらしい。
仕方なく決勝に進んだ17番。
決勝戦は、内周南南東代表の『ビイ』。
存在値90を誇る超人。
大星祭で優勝することが人生の目的で、そのために、貴族に上がらず、平民でいつづけている変態。
その気になれば、伯爵も目指せるだけの強さを持つ彼の武は本物だった。
勝つ気のない17番は、うまいこと負けようとするが、
『なぜ、貴様のようなゴミが決勝の相手なんだ! 大星祭を穢すゴミクズが! 二度と、この大会に出場できないよう、徹底的に壊してやる! 覚悟しろ!』
などと、イカれたことを抜かしてきやがったので、
普通にイラっとしてしまった17番は、
負けよう、負けよう、心の中では思いつつも、
(もういいや……ウザい。マパネット……あのカスの足をヘシ折ってやれ)
最後には、負の感情に支配されて、『ダークサイド(優勝)』に落ちてしまった。
結果的に1億をゲットした17番。
(変に目立っちゃったなぁ。……アバターラが身代わりになってくれているから、もう、ボクが魔王使いとして怪しまれることはないだろうけど……んー……んー……もう、いいや。やっちゃったもんは仕方ないし……)
こうして、平民としての階級が一気にあがった17番。
数日前にE5だった17番のランクが、
今日一日で、最高ランクのS5に爆上がりした。
――ちなみに、今回の件で、
ラストローズ辺境伯に、
また、疑いの目を向けられることになった。
『流石に不自然すぎる』ということで、
面談の時間を設けられ、
不戦敗の件であったり、決勝での戦いのことであったり、
色々と、事情聴取を受けた。




