79話 もちろんですとも。ええ、もちろん。
79話 もちろんですとも。ええ、もちろん。
『えぇ、と………………はいっ。もちろん、あなた様は、悪ではありませんとも。当然でしょう! ええ、もちろん!』
『その通りだ。やはり、君はわかっている』
その後も、なんだかんだ、ことあるごとに、
一方的な正義論を押し付けられ、
何度もゲロを吐きそうになった17番。
ただ、不思議なもので、言葉を交わし続けていると、
ゼンドートの言いたい事も、なんとなくわかってきて、
最終的には、
――『さすがに正義の化身だとは思わないが、ゼンドートを絶対悪と言い切るのも、それはそれで間違っているのかもしれない。なぜなら、自分のことを、正義の化身だとマジで確信しているから。そこに嘘があるなら、悪に転ぶ可能性もあるが、無限に正義を自称し続けるのであれば、最低限は正義側であり続けるだろう』
という結論を抱くようになった。
そのことで、センエースとたびたび議論になって、
ちょいちょい、『ゼンドートに対する認識』に変動が起きたが、
『最終的な結論の方向性』は、この時点で固まっていたように思う。
17番の結論は、ゼンドートに9番を殺された今も変わらない。
ただ、『正義という概念』に対する『捉え方』には大きな変動が起きた。
――『正義』は『暴力』の免罪符。
――『相手が悪なら殺していい』というおためごかし。
★
22日の夕方。
ゼンドートとの面談のあと、17番は、自主練で、巻藁を殴った。
100回殴っても痛くない。
拳がかなり鍛えられてきた。
そこへ、ミケがやってきて、
『ちょっとずつ、マシになってきたな。まだ話にならないけど、間違いなくマシにはなっている』
軽く言葉を交わした後で、
17番は、まじめに、
『ミケ……きみは、ゼンドート伯爵のことを……実際のところ、本音で言うと、マジでどう思う?』
『強くて信念がある貴族』
『……そう』
『――けど』
『けど?』
『あそこまで強い信念は、いつか身を亡ぼす……と思う』
『……んー……まあ、うん……そうだね』
『ただ……』
『ん? ただ?』
『俺も、できれば、ああいう絶対の信念を持った貴族になりたい』
そのときのミケの目は、『ここではないどこか遠く』を見ているような気がした。
『ぇえ……ええ……まじぃ? ああいうタイプの人間がいるのも最悪いいと思うけど、ああなりたいと思うのは、また違うんじゃない? それはダメなんじゃない?』
この時、17番は、ミケに対し本格的に『……こいつ危ういな』という感情を抱いた。
残りは午後に投稿します(*´▽`*)




