78話 可能性だけで言えば。
78話 可能性だけで言えば。
『君って、ほんと、成長率がバグっているね、ミケ。……もし、これが、なろう作品だったら、君が主人公だよ。……で、ボクがラスボス。おそらく、君はボクを倒すために産まれてきたんだ』
『お前みたいな雑魚を倒すことを、俺の人生の最大目的にするな。無礼にもほどがあるぞ』
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17番は、その日の夕方に、ゼンドートと、また面談を行った。
前日の面談の場で、確かに、ゼンドートは、『また、場を改めて、互いの哲学をぶつけあうとしよう』と言っていたが、まさか、翌日に、それを実行してくるとは思っていなかった17番。
辟易しつつも、面談の場におもむいた17番に、
ゼンドートは、挨拶もそこそこに、
『前にも言ったが……世の中には、僕を【極端だ】という者がたまにいるが……しかし、そうだろうか? 逆に、僕以外の全員が極端な思想をしていて、僕だけがまともという可能性は本当にないだろうか?』
『あると思いますよ。可能性だけで言えば』
『素晴らしい柔軟性だ、17番。そうだとも。可能性はあるのだ。……その可能性を考慮せずに、僕の表層の言動だけを感情論のみで糾弾するのは、極めて卑劣で卑怯だと思わないか?』
『ある意味で、そうだと思いますよ。ボクはボクで、伯爵のこと、極端だと思っていますが……しかし、ボクは【あなたが間違っている】とは思っていない。たぶん、この世に正しいことなんて存在しない』
『君のその意見は、少々ネガティブすぎるな。【正しいこと】は存在する。僕がそうだ。僕は正義の化身。僕の存在こそが、この世界に刻まれた、たった一つの理想にして真理』
(この人、今の言葉を、『鋭利なシャレ』じゃなく、ガチで言ってんだよなぁ……よく、それだけ、自分を過信できるもんだ)
『……極端と断ずるのは、まだいい。理解が及ばない領域を忌避する気持ちは分からないでもない。……だが、たまに、僕のことを、あろうことか【悪】だと罵るバカがいる。呆れてモノも言えない。ここまで誠実で、神よりも正義に殉じている僕を悪と呼ぶのは、流石に逆張りが過ぎる。君も、そう思うだろう?』
『えーっと……まあ、そのぉ……いわゆる、ひとつのぉ……しかして、それがゆえに、つまりはぁ……だからこそ、逆説的なアレがソレで、さりながら、しかるに、かつ、ないし、反面……』
『なにを言っている? なぜ言葉を濁す? まさか、君は、僕を悪だと認識しているのか? まさか、そんなことはないと思うが』




