71話 最強の神器。
71話 最強の神器。
17番から教えてもらった『ダンジョン神器』の中でも、
特に心惹かれたアイテム。
それが、この……『毘沙門天の剣翼』。
形状は『厚みのあるジグソーパズル』みたいな感じ。
歪で、一般的なビーダマと同じぐらいのサイズ。
人差し指と親指でつまんで、まじまじと見つめていると、
センの『中』にいる『17番』が、ボソっと、
(それは、パーツの一つに過ぎないけどね)
「わかっている。『毘沙門天パーツ』を『30個』集めないと『起動できない』んだろ」
今回手に入れたのは、あくまでもパーツで、
パーツだけあっても、何の意味もない。
「しかし、改めて考えると……30個って多すぎな。今日までに集めてきた神器全部より多いから。流石に盛りすぎだぜ、いくらなんでも」
センが、あまりにも作業ゲー感覚でクリアしまくっているので、前提を見失いそうになるが、『地下迷宮』は、これまで、1000年以上、上位貴族が束になってかかっても、誰もクリアできなかった極悪難易度ダンジョン。
そんな地獄ダンジョンを30個もクリアしないと使えない神器……
――それが、毘沙門天の剣翼。
センは、『亜空間倉庫』に、毘沙門天パーツをしまい込むと、
「よし、じゃあ、今日・明日中に、パーツ30個、集めるか……できたら、今夜中に集めたいが……30は、さすがに厳しいかなぁ……」
などとブツブツ言いつつ、センは外に出た。
★
ダンジョンを出たところ。
近くで待っていた『黒猫の99番』が近づいてきて、
「……セン、報告だ。ラストローズ辺境伯と鬼の14番は、問題なく懐柔できた。どちらも、バカじゃないからな。覚醒アイテムの力を魅せれば、すぐに理解してくれた」
すでに、センは、彼女に『今後、自分のことは猿の17番ではなく、センと呼んでくれ』と言ってあるので、99番は、センのことを、元のナンバーネームである『17番』ではなく、平民ネームの『セン』と呼んでいる。
それは、3番も同じ。
「通行証は?」
「今、3人で、手分けして回収している。どうせなら、残りの80個ぐらいある、全てのダンジョンの通行証を集めた方がいいだろう? ラストローズ辺境伯に手を回してもらったから……もうそろそろ、すべての通行証が集まるはずだ」
「いいムーブだ。褒めてつかわす」
「……ありがたき幸せ」
若干、冗談っぽく言っているが、
しかし、99番は、内心、本当に『センに褒めてもらえたことが、ありがたくて幸せだ』と思っている。




