67話 凡人の底力を魅せてやる。
67話 凡人の底力を魅せてやる。
「17番、お前は気概が足りない。あと、なんやかんやで、なによりスピードが足りない」
(冗談はもういい! 君の冗談には付き合ってられない!)
「冗談? どれが? ここ数秒の俺は、『マジの意味でのファントムな言葉』は一個も言ってねぇが?」
(自殺としか思えない行動全部が、ボクからすれば冗談だ! 君は自分の存在価値が分かっていない! ゼンドートに勝てる可能性が、ほんのわずかにあるとしたら、君だけなのに、その君が死んだら――)
「――わかってねぇのはお前の方だ」
凍てつくような言葉と瞳。
そのままセンは、地獄を睨みつけたまま、
「リミットは10日しかねぇんだぞ」
と、現実を口にする。
それに対し、17番は、一瞬だけ気圧されそうになったものの、
しかし、グっと奥歯をかみしめて、
(そ、それは分かっている! けど!)
いまだ、常識を叫ぼうと躍起な17番に対し、
センは、視線の強度をさらに高めて、
「俺みたいな『才能のない無能の凡人』が、『狂気的な絶望を殺そう』と思ったら、極限を無限に超えないといけねぇんだよ」
(……)
バキバキに血走った目で、ギュンギュンに膨れ上がるオーラを全身に充満させるセンエース。
覚悟の度合いがバグっている……と、その波動だけでも理解できた。
どれだけ鈍感な凡人でも、肌感だけで理解出来てしまうだろう。
『今のセンエースを止めることなど誰も出来ない』という、絶対的な事実を。
「17番。お前、うるせぇだけで、なんの役にも立ってねぇ。自覚しろ。便利になってくれとは言わんから、せめて、黙って見てろ」
(……)
「――凡人の底力を魅せてやる。『ジェットエンジンを搭載した休まないウサギ』を『重りでがんじがらめになった鈍亀』が抜き去る……これは、そういうレースだ」
(……き、君みたいな変態が、凡人を騙るな。それはボクみたいな本物の凡人に対する冒涜だ)
★
《雅暦1001年7月22日夕方》
センがダンジョンを攻略しまくっている裏で、
3番&99番チームと、アバターラチームも、
それぞれ、3つずつ、アイテムを回収していた。
アバターラが回収したのは超神聖水3つ。
・『魔王を召喚できる時間を5分間ほど伸ばす超神聖水。
・魔王を3体同時に召喚できるようになる超神聖水。
・召喚した魔王を、ダンジョン魔王と同じ強さにする超神聖水。
セン自身は、もう、『魔王』を使う気はないが、
『アバターラに使わせてサポーターにする』のはありだと考えて、
アバターラには、超神聖水を集中的に回収させた。




