66話 心臓のオシャレはマスト。
66話 心臓のオシャレはマスト。
すべてを装着したセンは、
全身の挙動をチェックしたのちに、
「うん……なるほどな」
と、一言だけつぶやくと、
「よし……じゃあ、次のダンジョンに行くか」
と、軽やかにファンキーをはためかせつつ、
『さらなる次』を求めていく。
どうやら、センエースの辞書に『休憩』の二文字はないらしい。
止まることなく先へ。
もっと先へ。
それを見て、17番が、
(おいおいおい!)
「どうした、17番。そんなに慌てて。財布でも落としたか? おっちょこちょいな奴だな。恥を知れ、恥を」
(き、君、ガブリエルを、ずっと装備し続けるつもり?!)
「俺クラスのファッションリーダーともなれば、心臓のオシャレはマストだからな。心臓を貫かれた時に、チラっと見えるのが粋なんだ」
(ガブリエルは、さすがにヤバすぎる!)
「知っているさ。けど、『オシャレは我慢』って、昔のエロい人の格言があるからな。ファッションモンスターとしては背中を向けるわけにはいかんぜよ」
(それを装備し続けたら、普通なら、数時間で死ぬ!)
「普通なら数時間で死ぬ。つまり、俺なら3年は大丈夫ということだな」
(ナニ何言っての?!)
「安心しろ、17番。理由はないが、俺なら大丈夫な気がする。すでに朦朧としてきているし、手足の感覚がないが、問題は何もない」
(安心できる要素が一切なくて、問題しかないんですけど?!)
「さわぐな、17番。みっともない。Koolにいけよ。俺にとってこの状況は、昼下がりのコーヒーブレイクとなんら変わらない平穏な、ごほっ、がはっ、げはっ!!」
大量の吐血で、さらにクラクラするセン。
余命いくばくもない重病患者ですら、
今のセンを見たら、慌てて駆け寄って手を差しのべるだろう。
(やりすぎだよ、セン! いくらなんでも、流石に、それは無茶すぎる! 死んだら終わりだ! ゼンドートに勝つとか負けるとか以前の話だよ!)
「自分の『中』に『常識を語るゴミがいる』ってのは厄介だな。……『外部の誰か』なら、シカトして終了だが、『中』にいられると、相手をせざるをえない」
しんどそうにそう言いながらも、
センは次のダンジョンへと進む足を止めない。
(セン! 止まれ! 『頑張る』のと『自殺する』のは全く別だ! 君が死んだらボクも死ぬ! ボクらが死んだら、誰もゼンドートを止められない!! ゼンドートを止められなかったら9番が死ぬ! それは絶対に許さない! 止まるんだ!)
「腐っても、俺の中にいて、四六時中俺を見ているんだから、血ぃ吐きながら『止まるんじゃねぇぞ……』ぐらい、言ってもらいたいもんだけどなぁ」
今週土曜日、自作コミカライズ版の新作を配信します。
それと、同時進行で、新しいチャレンジも進めています。
ずっとやりたかったけど、なかなかできなかった作品の投稿をする予定。時間がかかる作品なので、いつになるかは未定。ギリギリの時間をかきあつめて、コツコツ進めている感じです。
ちなみに、チャレンジの内容をちょっとだけ言うと、「センが日本でリアルに大暴れする作品」ですw
だいぶ尖った作品なので、一般ウケは厳しいですが、皆さんには楽しんでもらえると信じています。




