65話 負荷がハンパじゃない。
65話 負荷がハンパじゃない。
(当然だ。あれを装備すると、『一番キツい時のインフルエンザと同等』か『それ以上』の状態になるんだから……40度以上の高熱、爆発するような頭痛に、凶悪な倦怠感……)
メリークルシミマスの負荷はハンパじゃない。
ほかの自傷装備も全て、常人なら耐えられないレベルの苦痛。
なのに、センは、それを背負った上で、ほとんど休むことなく、朝から晩まで、ダンジョンを駆けずり回って、モンスターを殺しまくり、魔王と死闘を演じている。
(……壊れている……人間じゃない……)
17番が、本音を飲み込んでいる間、
センは、
「よし、じゃあ、次のダンジョンに行くか」
そう言って、一切休憩をはさむことなく、
元気にダッシュするセンに対し、
17番は、『深淵の向こうにあるコズミックホラー』を感じましたとさ。
めでたし、めでたし。
★
アザゼルを装備したことで、
センの足には、常時激痛が走るようになったわけだが、
……『本当に装備してる?』と言いたくなるほど、
センは、チャラへっちゃらな顔で爆走しまくり、
ダンジョンをクリアしまくっていく。
頭のおかしさで他の追随を絶対に許さない狂気の閃光。
サイコパスの熟練度においては、
絶対に宇宙一位じゃないと気がすまないらしい。
――結果、センは追加で4つの自傷アイテムをゲットした。
『ラファエルの楔』
「手掌部に直接刻み込む形態の呪われた楔。戦闘力が上昇しやすくなる(拳の硬さ強化特化)。中手骨および指骨に異常骨化反応が誘発され、骨密度と皮質骨の表面圧耐性が異常に増加。神経束や表層組織が硬化に適応できず、慢性的な疼痛と微細断裂・炎症反応が持続的に発生。末梢神経障害に似た感覚異常が生じる」
『ベリアルの首輪』
「首に装着するトゲ付きの拘束型首輪。戦闘力が上昇しやすくなる(心肺機能強化特化)。ただし、換気中枢と反射系に深刻な障害が生じ、常時、閉塞性睡眠時無呼吸に酷似した呼吸不全状態に陥る。深層睡眠はほぼ不可能となり、断続的な低酸素発作と覚醒により、慢性的な中枢性疲労と精神錯乱を引き起こす」
『ウリエルの義眼』
「漆黒の義眼。戦闘力が上昇しやすくなる(視覚集中力強化特化)。ただし、その代償として、視覚系の基礎機能が著しく低下する。具体的には、周辺視野の極端な狭窄、中央窩の入力精度の抑制、動体視力および軌道予測能力の鈍化、視線固定の困難化など。視覚野における情報処理が不均衡になり、空間認識能力も著しく損なわれるため、集団戦・遠距離戦・多方向からの攻撃に対して極端に脆弱となる」
『ガブリエルの人工心臓』
「極めて劣悪な構造の魔動式人工心臓。戦闘力が上昇しやすくなる(血液循環強化特化)。ただし、他のすべての生理機能を犠牲にする。末梢血管収縮を強制駆動し、ATP再合成と神経伝導速度を瞬間的に増強する代償として、心拍出量は致命的に低下。血中酸素分圧の維持が困難となり、全身は慢性的な運動性低酸素症および脳虚血状態に陥る。これにより、失神発作・中枢性視野狭窄・四肢麻痺・乳酸蓄積・代謝性アシドーシスが常態化し、戦闘中はしばしばショック症状や心室性不整脈を伴う。装着者は、戦うごとに全身臓器の予備能力を削り落とされ、生命限界に向かって破滅的に消耗していく」




