63話 終焉の海。
63話 終焉の海。
ちなみに、今回、アバターラが獲得した『終焉の海』も、魔王特効の効果を持つダンジョン神器。
形状はクリスタルで出来たクナイ。
『装備者は、一日に30分だけ【最魔王化(魔王と同等の肉体スペックを得る)】の魔法が使えるようになる』
『装備者の、諜報適性・隠密適性・闇術適性を、超々々々大幅に引き上げる(当人のポテンシャル以上の力は得られない)』
最高クラスの諜報員である『蝙蝠の7番』にピッタリの魔王特効神器。
当然、アバターラも、蝙蝠の7番に、『終焉の海』を装備させている。
魔王特効神器を得た7番であれば、単騎でダンジョンをクリアすることも不可能ではないだろうが、しかし、『アリアドネのヒモ(ダンジョンから脱出できる神器)』がたりないので、安全面を考慮し、センは、今後も、『蝙蝠の7番はアバターラと同じチームで行動させる』と決めた。
「グォオオオオ!!」
と、ダンジョン魔王が、
最後の特攻を仕掛けてきた。
命を賭した全身全霊の突進。
それを、センは、
「存在値1020か」
闘牛士のように、あえて、ギリギリのところで回避しつつ、
「ついには、余裕で999の壁を越えてきたな。……999の壁を越えるのは大変なんだが……お前らダンジョン魔王にとっては、ただの数字でしかないらしい」
そう言いながら、グっと踏み込んで、
「――閃拳」
短い呼吸で、キュっと拳をきらめかせる。
その結果、ダンジョン魔王の顔面が、
パァアアアン、と盛大に爆散した。
「きたねぇ花火だ……っていうほど、花火っぽくもないか」
と、センは、どうでもいいことを口にして、
ダンジョン魔王の死体から5歩分の距離をとった。
第二形態に進化することを警戒していたのだが、
ダンジョン魔王の死体は、そのまま宝箱になった。
「第一形態が強い個体だと、第二形態に変身しない感じかな……」
センが強すぎるため、今回も危なげなく殺せたが、
今回のダンジョン魔王は、これまでで一番戦闘力が高かった。
存在値500ぐらいの魔王が10体ぐらい束になってかかっても瞬殺されるレベル……といえば、少しは、その強さが想像できるだろうか。
そんな、もはや大魔王と言ってもいい、強大な力を持つ魔王すら、
今のセンからすれば、片手間に瞬殺できる程度のモブ雑魚にすぎない。
センは、足で宝箱を雑に開ける。
中に何があるかは17番に聞いているので、ワクワク感は皆無。
宝箱の中に納められていたのは、『囚人がつけるタイプの足枷』と『いつもの説明書』。




