60話 みっともない本音。
60話 みっともない本音。
バッサリ切られた17番は、
苦々しい口調で、
(…………頼む、ボクが会いたいんだ)
と、みっともない本音を口にする。
寂しくなって、だから、
大事な人に会いたくなる。
どこまでも、弱い人間。
そんな17番に、センは、冷めた口調で、
(本当にキモい野郎だな、お前)
辛辣な言葉を受けて、17番は、
情けなさのあまり、『ふふっ』と笑い、
(い、今どき、そんなこと言ったら炎上するよ、センエース)
せめてものカウンターとして、心をしぼりあげて、そう言った。
しかし、センは、そのカウンターをするりと避けて、
(……『9番(男)』に会いたがっていることをキモいっつってんじゃねぇ。自分が会いたいだけのくせに、相手のせいにしようとする、そのしょうもなさがキモいと言っている)
(……人間なんて、そんなものだろ。ボクだけ特別女々しいわけじゃない)
(女々しいって言葉の方がよっぽど炎上するんじゃねぇか?)
(……ボクは『女々しい』を、『男の割に高性能』という意味で使ったんだ)
(それはそれで炎上するんじゃね?)
(……はは)
無理して笑ってみる。
心が潰れそうでも、それでも、無理して、どうにか『笑っている風』にみせる。
それも、とても人間的だ……
なんて、17番は思った。
★
結局、センは、9番に会いにいった。
マジで時間の無駄だと思ったが、
しかし、間違いなく『命の恩人』である17番の、本気の頼みなので、
流石に聞かないわけにはいかない……と思った。
ダッシュで家に帰り、
ノックもせずに、『蛇の9番』の元まで最短距離を行く。
「び、びっくりしたぁ……」
突然帰ってきて、豪快に入室してきたセンに、
普通に驚きの顔を見せてから、
9番は、
「せ、センパイ、おかえりなさい。心配していましたよ、全然帰ってこないから」
そういいながら、9番は、優しく微笑みながら、
センにギュっと抱き着いていく。
そんな9番に、センは、
「8月になるまで、俺はもう帰ってこない。それだけ言いにきた。心配はする必要ない。8月になれば帰ってくる。以上だ。質問は受け付けない。時間がないんでな」
ピシャリとそう言い放ったセンに、
9番は目を丸くする。
「えっと……あれ? え? センパイ……? じゃ……ない?」
センから離れて、後退りしながら、
「だ……だれ?」
「猿の17番だ。それ以上でも、それ以下でもない。今まではザコの演技をしていた。これが素だ」
そのセリフを、
センの中で、17番も聞いていた。




