56話 全方位に完璧な世界政府。
56話 全方位に完璧な世界政府。
「今も、王という単語を聞いただけで、動悸がドキドキして頭痛が割れそうに痛い」
センは、ゲロ吐きそうな顔でそう言った、
――そこで、それまで黙って見守っていた『黒猫の99番』が、
「じゃあ、私は、王の剣になる。王には『強い親衛隊』が必須だろ? 表立った敵は私が殺し、邪魔な政敵とかは3番が静かに排除する。これで、完璧じゃない?」
「物騒な独裁政権だな。そんなディストピアは、駆逐してやる。この世から。一匹残らず」
★
センエースに心酔している3番と99番を見て、
センの中にいる『17番』が、誰にも聞こえない心の声で、ボソっと、
(当たり前だけど……センエースが世界の中心で、ボクは蚊帳の外の向こう側だな)
自嘲しつつ、続けて、
(主人格を入れ替える前は……3番も99番も、『ボクだけが頼り』って感じだったのに……今は、どっちも、センエースしか見ていない。ボクに抱いていた感情を、そっくりそのまま移行したみたい……いや、違うな。センエースの愛され方は、ボクの慕われ方より……全然上だ。……はは)
17番は、そこで、タイムリープする前のことを少しだけ思い出す。
『ゼンドートがヤバい』『このままだと世界が終わる』と気づいて、
だから、必死になって仲間をかき集めて、全員で必死に強くなって、
たくさん話し合って、山ほどの作戦をたてて、ゼンドートに挑んだ。
『エグゾギアを使うことができる17番』が間違いなく『最強』だったから、
全員が『17番』を『切り札』だと認識した。
みんなが、17番を頼りにした。
あの豪放磊落で天上天下唯我独尊の『鬼の14番』ですら、
『貴様がこのチームのエースだ! このワシが認めた男は少ないぞ! 胸を張れ! がははははははは!』
と、17番を認めて、その『過剰にデカすぎる背中』を預けてくれた。
――本音を言えば、そのことが、死ぬほど嬉しかった。
頭おかしくなるぐらい誇らしかった。
『全員を守りたい』と、あの時は本気で思った。
(数値的にボクが一番強いから、だから、メインアタッカーを任された……それだけの話だってのに……バカみたいに浮かれていたな……)
……転生前から、誰にも頼られることのない人生。
だから、有能な連中に頼りにされて、舞い上がった。
ずっと、誰からも相手にされない、モブ以下の人生だった。
転生前はもちろん、転生して以降も、『魔王使い』になるまではずっと。
だから、魔王使いになった直後、産まれて初めて9番に慕われたことが、バカみたいに嬉しくて、
だから、会って間もない9番を一生守ろうと決めたりしたんだ。




