55話 過保護。
55話 過保護。
17番の問いを雑に突っぱねてから、センは、最後に、
(これだけ頭に叩き込んでおけ。……俺がここにいる以上、トゥルー以外の未来はありえない)
★
17番との『無意味なやりとり』を経てから、
センは、宝箱を開けた。
中には、『縄のロープ』と『紙』が一枚。
センは、縄のロープを掴み上げると、
そのまま、3番に、ヒョイっと投げ渡す。
「これは?」
という3番の問いに、センは、
「アリアドネのヒモ」
と、名称を言いつつ、宝箱から説明書を取り出して、中をチェックし、
「それを、体のどこかにくくりつけておけ。そうすれば、無制限かつMP消費なしで、リレ○トが使えるようになる」
「リ○ミト?」
「味方ごと、このダンジョンから脱出する魔法。今後は、お前ら二人だけで、ダンジョンを回ってもらうが、魔王との闘いで『やばい』と思った時は、迷わず脱出しろ」
「……」
「なんだ?」
「いや……最初からずっと、なんとなく、思っていたが……」
「だから、なんだよ」
「あんた……あたしらに対して、過保護すぎないか?」
「ぁあ? カァホォゴぉ? それはどこの宇宙語だ?」
「このヒモ……最悪、なくても別にいいものなのに、あたしらの安全を考えて、わざわざ最優先で取りにきたり……もしもの時のためのアイテムなんだから、最悪のことを考えて、自分が持っておいた方がいいだろうに、躊躇なく、あたしらに渡したり……」
「俺は最強だから死なない。お前らはザコだから死ぬ可能性がある。俺は効率を求めているだけだ」
「死ぬ可能性が高いのは、むしろ、そっちだろ。あんたが、あの最強魔法を使える時間は5分だけ。素のあんたは、存在値9の脆弱な肉体。戦闘力が意味不明に高いのは認めるけど、魔王の攻撃がかすったら死ぬ」
「ごちゃごちゃうるせぇなぁ……子離れできない母親か、てめぇは」
「17番」
「あ?」
「ゼンドート伯爵を殺したら、あんた、王になりな」
「……」
「あんたが統治する都市で……あたしは生きたい」
「お前の望みなんか知ったことか。俺は王になんかならん。そういうダルい仕事が一番嫌いなんだ。王冠をかぶったところを想像するだけでも、ヘドで溺れそう。おそらく、俺は王冠アレルギーだ。もしくは玉座ルガー症候群」
「あんたが王になったら、あたしは、あんたの『正しい統治を邪魔する屑ども』を掃除する影になる。あんたには、そういう存在が必要だと思うから」
「人の話聞いてる? 俺はエンペラータイムシンドロームだって言ってんだろ」




