54話 みんな有能だよ。無能なのは17番だけ。
54話 みんな有能だよ。無能なのは17番だけ。
(あの鬼型魔王は、決して弱くない。というか、これまでに見てきた魔王の中でブッチギリに強いと言ってもいい。それを瞬殺……マジかよ……こいつらのポテンシャル、エグすぎる……)
と、驚いていると、
それまで黙って趨勢を見守っていた、センの中の『17番』が、
ボソっと、
(その二人だけじゃない。この巨大都市ユウガにいる『上位の才能を持つ者』は、みな、凄まじいポテンシャルをひめている。『ラストローズ』も、『パメラノコット』も、『蝙蝠の7番』も、『燕の5番』も、『牡蛎の10番』も、『鬼の14番』も、『大猩々(ごりら)の8番』も……みんな、ポテンシャルを解放したら、とてつもない強さになった。……『鬼の14番』に至っては、ポテンシャルを解放したあとは、『無敵なんじゃないか』って思うぐらい強かったよ)
そこで、17番は、14番の奇行を思い出し、フっと呆れ交じりの笑みを浮かべて、
(……鬼の14番は、ほんとすごかった。単騎で、都市の外にいる大量の魔王をボコボコにして一掃していたからね。どんなダメージを受けても、なぜか分からないけど、ギャグ漫画のキャラみたいに、秒で治っていたし……)
(鬼の14番、すごいな。……まさか、この都市に、そんな化け物がいるとは……)
そこで、一転して、17番は、苦々しそうに、
(最強のラストローズ、超性能のパメラノコット、無敵の14番、他にもたくさんいる大勢の有能奴隷たち……その全員で挑んでも……ゼンドートには手も足も出なかったんだ)
(すごいな、ゼンドートさん。情報が集まれば集まるほどに絶望の濃度が高まるんだけど)
(センエース……改めてもう一度聞く……ゼンドートに……勝てると思う?)
その問いに対し、
センは、
(無理だな。あの『無敵の14番さん』ですら勝てなかった相手に、俺が勝てるわけない。頑張るのは、もうやめよう。全てを諦めて、全てを投げ捨てて、家に引きこもり、ゼンドートが暴れるエックスデーがくるまで、のんびりミルクでものんでいやがろう)
(……)
(もうダメだ……おしまいだ……)
(冗談がききたいんじゃない。ボクは本気で――)
(じゃあ、黙って見てろ)
(……)
(いちいち不安になってんじゃねぇよ、くそメンヘラが、めんどくせぇ。なんで、お前の不安を解消するために、俺がなんか言わないといけないんだ。俺はお前の彼氏か?)
(……)
(最後にもう一度だけ言うぞ。黙ってみてろ。そうすりゃ、気付いた時には、トゥルーエンドがトルコ行進曲でワルツを踊っている)
(……どういう意味?)
(知らん)




