52話 ガールスカウトの顧問は忙しい。
52話 ガールスカウトの顧問は忙しい。
魔王の眼差しは、深い闇の底をのぞき込むような重みを持ち、
常人なら、視線を交わしただけで昏倒してしまうだろう。
全身から放たれるトゲトゲしい圧力が、フロア全体の空気を重たく沈めている。
本来であれば、震え上がるのが当然の状況――
だが、センは、まるで遠足の引率でもしているかのような気軽な口調で言い放つ。
「よし、じゃあ、今回は、ちょっと、3番と99番だけで戦ってもらおうか」
周囲警戒しつつも、呑気に、続けて、
「お前らだけでダンジョン魔王に勝てるか見てみたい」
と、まるで『ガールスカウトの顧問が、メンバーだけでギアを組み立てられるかチェックするよう』な軽い雰囲気で、戦闘指示を出す。
御指名を受けた二人は、互いに顔を見合わせ、
『大丈夫だろうか?』という不安を態度に出す。
そうなるのも当然で、まだ彼女たちは、一度も、
『特効装備を纏った状態』で『魔王と戦ったこと』がないのだ。
ここまでの魔王戦は、ずっと、センの独壇場で、彼女たちの出番はなかった。
魔王の流れ弾に被弾しないよう、身を守っていただけ。
だから、当然尻込みするわけだが、
しかし、センの命令に逆らうという選択肢は、
すでに、彼女たちの中にない。
3番と99番にとって、センは、もはや絶対の忠誠を誓った王に等しい。
というか、実際、それ以上の存在……『神』と評しても過言ではない。
だから、二人は、最初の数秒尻込みしただけで、すぐに気合いを入れなおし、
それぞれ、アイテムボックスに手を伸ばし、センから与えられた魔王特効の武器を抜く。
『エキドナの拷問剣』は、黒曜の長剣で、
『死と隣り合わせのレミング』は、刀身がグチャグチャに歪んでいるナイフサイズの双剣。
二人は武器を構えて、
「「――最魔王化――」」
『ダンジョン魔王と同等の肉体スペックになる魔法』を展開していく。
2人とも、グンと存在値が底上げされる。
人類の『常識』を一瞬で凌駕するチート。
現時点における表向きの人類最強はラストローズ辺境伯の存在値150。
史上最高の天才。
武門の誉れ。
神の加護を授かった聖剣の使い手。
あのゼンドートすら嫉妬する天才イケメン超人。
史上最強クラスの天才が誇る『人類最強の数値』を……
ここにいる美女二人は、脅威のセクスタプルスコアでブチ抜いていく。
人類最強の6倍ぐらい強い二人の美女は、
キっと、強い目で、魔王を睨みつけた。
2人の瞳に呼応するように、
ダンジョン魔王は玉座から立ち上がり、パチンと指をならす。




