47話 常識だろう、バカが。
47話 常識だろう、バカが。
「な、なんだ……あんたは……いったい、何者……」
「センエース、探偵さ」
「……た、探偵?」
「気にするな。俺の発言は、基本的にフルシカトでオールオッケーだ。耳をすましたところで、鼓膜の無駄」
そんなこと話していると、『センに殺された魔王の死体』がヒュンヒュンと形と変えていく。
「な、なんだ?!」
と、新鮮な驚きを見せる3番に、センが、
「魔王を殺すと宝箱になる。常識だろう、バカ者め」
「そんなものが常識であってたまるか!」
まっとうなツッコミをしてくる3番に背を向けて、
センは宝箱を開ける。
中には、腕輪が一つと、いつもの説明書が一枚。
「これか……」
そう言いながら、センは、腕輪を取り出し、装着しつつ、
説明書をじっくりと確認していく。
「名称は……『エグゾギア【魔王】の腕輪』。……いいねぇ」
本音を口にしつつ、この腕輪がどういう仕様なのか、しっかりとチェックする。
「……オーラやMPを消費することなく、エグゾギアを使える腕輪。ハンパないねぇ」
そこで、それまで黙ってみまもっていた黒猫の99番が、
「17番……その、エグゾギアというのは?」
「機動系魔法の最上位だ」
機動魔法は、搭乗型の魔導戦闘兵器を召喚する魔法。
簡単に言えば『ガン〇ム』を召喚することができる魔法である。
その最高位が最強決戦兵器エグゾギア。
「分身魔法の最上位がオーラドール・アバターラで、機動系魔法の最上位がエグゾギア。まあ、エグゾギアは『システム』だから、『魔法』とはちょっと違うが、その辺を語りだすと長くなるからやめておく」
そう言い捨てつつ、
仕様書を細かくチェックしていく。
(……『俺が獲得した経験値』を使って強化することが可能……なるほど。『俺』が獲得した経験値を強化素材に出来るから、『副人格にプールされているかどうか』はどうでもいいってことか)
これまで、センが、いくらモンスターや魔王を倒そうと、その経験値は、すべて、センの中にいる17番に注がれていた。
だから、センの存在値はずっと9のままだったが、『経験値をエグゾギアに注ぐ』という形にすれば、今まで稼いできた経験値を、『実際に使える力』として振るうことができる。
仕様書を最後までチェックしたところで、
センは、看過できない一文を見つける。
「……エグゾギアを使用できる稼働時間は、最大でも一日5分が限度……え……み、短っ……」
真っ青な顔になるセン。
頭を抱えて、
「え、俺……ゼンドートを5分で殺さないといけないの?」




