45話 ヤクザは基本的にハズレばっかり。
45話 ヤクザは基本的にハズレばっかり。
「3番さんよぉ……そんな『絶妙に使えないガキ』をかばう必要ある? 始末して、優秀な部下を補充してもらった方がいいんじゃない?」
「……ヤクザは当たりはずれが大きい。忠誠心のない優秀な部下よりも、忠誠心のある無能な部下の方が、まだマシなんでね」
「そうか。俺は、忠誠心のある優秀な部下しかいらない」
「……」
「針土竜の3番……お前が、俺の『忠誠心MAXの優秀な部下』になると誓うのであれば、98番もお前も殺さないでおいてやるよ。どうする?」
「私の今の『実質的な主人』は、ヤクザのトップである『セミディアベル公爵』だ。闇社会のフィクサー。この世界で最も恐ろしい男。……公爵を裏切ることは出来ない」
「心配するな。セミディアベルは俺が殺す。ゼンドートも殺す。この世界の鬱陶しい貴族は全員殺す。そしてお前を貴族にしてやる」
「……」
「針土竜の3番。お前が望むものを全部くれてやる。だから、俺に従え。俺がお前の光になってやる」
「ずいぶんと……大層なことを言う……『妙な拳をもっているだけの奴隷上がり』風情が」
「だからこそ高みに行けるんだ。最初から全てをもっているバカ貴族では絶対に届かない、本物の高みに……俺なら届く。俺だけがたどり着ける」
「……」
「選べ。針土竜の3番。人生最大の二択。正解を選べたら……今日をお前の完璧な誕生日にしてやる」
「……ふ、ふふ……」
「もっと笑えよ。足りねぇよ。狂気も呆れも歓喜もぜんぶ滑稽な闇鍋にして、『今までの自分』と『これからの自分』を笑ってみせろ。そうすりゃ、少しは楽になる。……たぶんな」
「変な人間だな、あんた……ヤクザをやっていると、異常者を見る機会が多いが……ここまで狂っている奴は……見たことがない」
呆れを全開にして、そうつぶやいてから、
3番は、
「……猿の17番。……あたしは、何をすればいい?」
★
『黒猫の99番』が、大量の通行証を確保してきて、すぐ、
センは『ガストリンの地下迷宮』に向かった。
もはや、昼間の『ぬるい体力トレーニング』をやる意味はない。
『プロ野球選手に長距離ランはいらない』の理論に似ている。
下地が出来ているなら、惰性の基礎トレは時間と体力の無駄。
――ここからは、実践に実践を重ねていく。
血で血を洗う死闘だけが、今のセンエースを育むたった一つの栄養素。
イカれた狂気という紙ヤスリで、魂魄をガシガシと磨いていくのだ。
――今回は、99番だけではなく、針土竜の3番も一緒。




