36話 夢見てんじゃねぇよ。
36話 夢見てんじゃねぇよ。
センが渇望していた神器。
『アスクレピオスの杖』
この杖の効果に関しては、17番から聞いているので、説明書を見なくとも理解できている。
というか、だからこそ、最初にこれを取りに来たのだ。
『アスクレピオスの杖』は、魔力消費なし・使用回数制限なしで、『蛇の慈悲』という高位魔法が使い放題になるという、えげつない神器。
ちなみに、『蛇の慈悲』は『発動してから9分間ほど動けなくなるが、どんなケガ・病気・疲労も完全回復する上、超回復性能も極大アップする』というバグったような魔法。
「これがあれば、もっとイカれた修行ができる。無限の仙豆を手に入れたようなもの」
と、そこで、黒猫の99番が、
「……17番……」
と、声をかけてきた。
センが視線を送ると、
「……助けてもらったこと……まずは礼を言う。ただ……もう、私を庇わないでほしい。あなたと私では……命の価値が違い過ぎる。あなたは、今後、きっと、大きなことを成し遂げる。ゼンドートがどうとか、そんな小さなことじゃなく……宇宙規模の、もっと大きな……」
「お前がどう思うかは勝手だが、それと同じように、俺がどうするかは俺が勝手に決める。お前の言葉ごときで、俺が言動を制限するなんてありえねぇ。夢見てんじゃねぇよ」
「……くっ……で、では、せめて……もっと自分を大事にしてほしい。あなたは……自分を蔑ろにしすぎているように思う」
「勘違いも甚だしい。俺は、誰よりもワガママに生きているさ」
「あ、あなたはっ――」
「うるせぇ。時間の無駄だ」
ピシャリと、99番を黙らせてから、
センは、
「それより、さっさと次のダンジョンに向かうぞ」
「はっ?! まさか、今から、別のダンジョンに挑むつもり?! そんなボロボロの状態で?!」
「当然だ。今夜中に、全部で5つクリアする予定。よって、ダラダラ喋っているヒマはない」
「5……っ」
「ちなみに、今は『アスクレピオスの杖』は使わない。なぜか。まだまだ全然動けるからだ。雑に9分間も時間を無駄にすることは出来ない。それに、極限状態を維持した方が、シナプスの華が萌ゆる。俺は今夜中に、たるんだ細胞の全部を入れ替える」
「……」
センの言葉に、99番がビビリ散らかしていると、
そこで、
近くの地面の一部、直径1メートル分ぐらいが、パァっと淡く光り出した。
ゼ○ダの伝説のボス部屋と同じシステム。
センは、
「なに呆けてんだ。帰るぞ。そして、次のダンジョンへGO」




