35話 難易度が高い間違い探し。
35話 難易度が高い間違い探し。
軽快なステップで左手に、より濃厚なオーラをためるセン。
ダンジョン魔王は、血走った目でセンを睨む。
そして、数秒悩んだ上で、
『それでも、99番を狙う』という決断を下した。
総合的に考えて、実際、その方が勝利の確率は高いだろう。
ただ、それは『0,000001%』が『0,000002%』になるぐらいのもの。
俯瞰でみれば、『難易度が高い間違い探し』レベルの誤差。
ダンジョン魔王は、全触手を総動員させて、99番に猛攻撃をしかけた。
99番自体は正直どうでもいい。
99番をかばったセンが負傷すること……それが狙い。
だが、センは、片腕を器用にブン回して、
スパスパと、すべての触手を切り刻んで、
完璧に99番を守ってみせた。
「弾幕薄いよ、何やってんの?」
と、最後には、余裕で煽っていくスタイル。
ズタズタに切り裂かれたダンジョン魔王の触手。
結果として、体積がかなり小さくなっている。
「その様子だと、このまま、触手を切っているだけで死にそうだな。どうする? まだ続けるか? それとも、第三形態になってみるか? 俺としては、そっちの方がありがたいんだが?」
煽られても、しかし、何も返せないダンジョン魔王。
もう、すでに手札は全て切ってしまっている。
絶望するダンジョン魔王に、センは、
「なんだ、もう次はないのか。じゃあ、俺もヒマじゃないんでね……死んでくれ」
そう言いながら、ダっと地面を蹴って、一気に距離を詰めると、
ダンジョン魔王の中心、目の部分に思いっきり、
「――閃拳」
左手の閃拳をぶちこんでいく。
ダンジョン魔王の目がグニャリとつぶれて、
そのまま、全身がブシャっと、壁に投げつけたトマトみたいに弾け飛んだ。
完全勝利。
その直後、
つぶれた魔王の死体がヒュンヒュンと形と変えていく。
「……宝箱になる……と思わせておいての第三形態ってパターンも微レ存」
などとつぶやきつつ警戒心を怠らないセン。
だが、魔王の死体は、素直に、『宝箱の形状』へと変化したのだった。
「宝箱が実はミミック型の第三形態で、開けた瞬間にザ○キを撃たれる……というパターンも微レ存」
などと、まだまだ警戒しつつ、宝箱を開けるセン。
――どうやら普通に宝箱だったようで、
中に入っていたのは、
『短い杖』と『一枚の紙』。
紙は、いつも通り説明書で、
杖の方は……
「よし。問題なく、『アスクレピオスの杖』をゲットできた。これで、これまでとは違い、ちょっとは『無茶』ができるようになる」




