30話 ダンジョン魔王の成長システム。
30話 ダンジョン魔王の成長システム。
センは、アイテムボックスから取り出した『神眼モノクル』を起動させて、しっかりと、魔王の強さを確認してみる。
すると、
「ん? 存在値550?」
魔王の強さは、都市の外にいる者も含め、
みな、判を押したように『存在値500』だった。
だが、目の前にいる魔王は550。
この奇妙な事態に困惑していると、
センの中にいる『霊体17番』が、ボソっと、
(ぁあ……言い忘れていた。ダンジョンをクリアするたびに、魔王はどんどん強くなるんだ)
(ほう……そいつは、むしろ、好都合だねぇ)
などと、心の中で、つぶやきつつ、
センは、トントンと、片足ジャンプで体軸を整えると、
後ろにいる『黒猫の99番』に、
「ここからはエグイ死闘になる。邪魔するなよ。サポートもするな。こいつは俺一人で片付ける。回復魔法も使うな。俺がどんな状態になろうと……」
「だ、大丈夫なのか? あの魔王……存在値550なのだろう? さ、流石に、強すぎないか? あなたも、念のため魔王を召喚した方が……」
「たかが550程度だろ? 俺からすれば、『幼児向けの数独』より簡単だ」
そう言いながら、ゆっくりとした歩調で魔王のもとへと歩いていく。
じっくりと観察しつつ、体内の気血を沸騰させていく。
(……存在値は550。現闘ランクは『俺的10000000000000000段階評定』中の『70』ぐらい。戦闘力も、これまでの魔王よりだいぶ上だな。魔王の戦闘力は、これまで見てきたヤツだと、7~9ぐらいが精々だった。……いいねぇ。そうじゃなきゃ、俺の踏み台にもなれねぇ)
そこで、ダンジョン魔王が玉座からゆっくりと立ち上がった。
そして、優雅に、首をコキコキっとならしてから、
パチンと指をならす。
すると、玉座がスゥっと地面にとけていった。
「私のダンジョンを荒らす者よ……覚悟はいいな」
簡素な言葉で威圧をかけてくる魔王。
その辺のやりとりは、これまでの魔王と大差ない。
センは、丁寧に武を構えながら、心の中で、
(……魔力の揺らぎは動。オーラの質は陽。属性は火猛闘華。……『あれこれ考えず、ひたすら、接近戦でゴリ押ししてくる超脳筋パワーファイター型』の魔王。なんだかんだ、こういうのが一番強いんだ。結局、強化系が最強理論。……存在値の差を考えれば、一撃がかするだけでも、俺は死ぬ。ヒリつくねぇ)
「死ね」
またもや簡素な殺戮宣言。
その直後、
ドンッ!
と、地面を強く蹴るようにして突進してきた。




