29話 最低でも100億以上。
29話 最低でも100億以上。
「――あなただけが、ダンジョンをクリアすることができる。この都市の地下に眠る無数の神器が、すべて、実質、あなただけのもの。すごい……すばらしい!」
(……その上で、俺は、おそらく、経験値倍率がバグっている。そこらのザコ一匹を殺すだけで、数億~数十億という、狂ったような経験値を稼ぐことができる。その上で……俺……というか、17番は、何度もタイムリープを駆使して、大量のモンスター&魔王を殺ろし、山のような経験値を稼いだ)
99番に乗っかる形で、センは、
自分自身のチートぶりを整理してみた。
並べて、揃えて、晒して、丁寧に分析して……
――しかして、だからこそ、センは、グっと奥歯をかみしめ、
脂汗を浮かべながら、
(そんなチートまみれの『猿の17番』ですら……ゼンドートには勝てなかった。改めて考えると、ゼンドートは、マジで、とんでもない化け物だぜ。そんなやばい奴を、俺は、たった10日で超えないといけない。……地獄だな)
心底しんどそうに溜息をついてから、
続けて心の中で、
(17番が稼いだ経験値は莫大……その全てを使っても勝てなかったと言うことは、ゼンドートの存在値はどんなに低く見積もっても100億以上。それだけの数字を殺そうと思えば、最低でも、存在値『億』クラスになっておかないと……流石に、まともに戦えないだろうな)
現実と向き合う。
たとえ、それがどれだけ絶望的であっても、
真正面から捉えて離さない。
それが、センエースの流儀。
(必ず殺してやる。俺なら出来る。……根拠はない。そんなもんいらん。狂気的な絶望の前で、理屈なんざ、甘い戯言にもならない)
★
最終フロアに辿り着くセン。
広さは、体育館サイズ。
この広いフロアのど真ん中に、まがまがしい玉座が設置されており、
そこに、『異常に禍々しいオーラ』を放っている怪物が鎮座していた。
人型で、けれど、明確に人ではない姿。
戦闘狂の悪魔……とでも形容すべき、武道家タイプのムキムキタイプ。
その怪物……『ダンジョン魔王』は、優雅に、玉座に腰をかけたまま、何も言わず、ジっとセンを睨んでいる。
これまでの経験で、ダンジョン最奥に魔王が待ち構えていることを理解しているセンは、特にリアクションを示すこともなく、バキバキと優雅に指の関節を鳴らすばかり。
じっくりと、魔王を観察していく……
その中で、センは、
「ん?」
目の前にいる魔王が、これまでに見てきたどの魔王よりも、若干強いことに気づいた。




