24話 アバターラの本体。
24話 アバターラの本体。
「――もう二度と言わないから、死ぬ気で脳に刻み込め」
そこで、センは、底冷えするような、
魂の芯を震わせるような狂気の視線と声音で、
99番の全てを射抜くように、
「ダンジョンの通行証を、5つ、取ってこい。どこのダンジョンの通行証が必要かは、このメモ帳に書いてある」
そう言いながら、小さなメモ帳を99番に渡し、
続けて、
「通行証をもらうために必要な金は、『俺の分身であるアバターラ』に死ぬほど回収させているから、そこから捻出しろ。以上だ」
「……」
気圧されて、一瞬、声が出なくなった99番。
これまでの『猿の17番』とは、明らかに『魂の強さ』が違う。
この力強さ、気迫、圧力は……アバターラと同等……いや、それ以上。
『一生ついていきたくなる、アバターラの、あの背中』以上の厚みを……今の『猿の17番』からは感じる。
99番は、数秒ほど呆けていたが、
「……ど、どういうことだ? 性格も口調も、これまでの、猿の17番とは、まるで違う。……ぉ、お前は、猿の17番じゃ……ないのか……? まるで、アバターラ……いや、アバターラ以上……」
「さっき、ゼンドートにも言ったが、これまでは、『アホのフリ』をしていただけだ。そっちの方が都合よかったからな。しかし、もう、その必要性もなくなったから、素でいかせてもらう」
「……素……」
「最後にもう一度だけ、お前のくだらない天丼ボケに対するアンサーをくれてやる。……俺はアバターラの『本体』だ。本体より優れた分身など存在しない」
「……」
「いつまで突っ立ってんだ。さっさと行け。俺の理性がちょっとでも残っているうちに、とっとと消えるんだ」
「………ぁ………ああ……わ、わかった……」
戸惑いながらも、素直にそう返事をして、
99番は、出張所へと、ダッシュで向かった。
★
日が沈み始めた夕方。
センは、ついに巻藁を殴り続けるのをやめて、
「よし……じゃあ、そろそろダンジョンに行くか……」
と、ふらふらしながら、そんなことを口にする。
それを聞いて、それまで黙っていた『センの中にいる17番』が、
(おいおいおい、その状態でダンジョンに行く気? いや、死ぬ死ぬ!)
「17番……お前は、まだ分かっていないようだな……」
(はぁ? なにが?)
「人は死なないと成長しないんだよ。死ななきゃゴミだ。死にもせずに生きようとするのが、そもそも論外なのだ。世間の大人どもが本当のことを言わないなら俺が言ってやる。死は命より重い」




