20話 漆黒の証明。
20話 漆黒の証明。
「魔王が都市内部に入り込んだ件で、何か、一発逆転の叡智を借りられないかと『秘密の宝物庫』の『書庫』を片っ端から調べてみたところ、実に面白い本を発見してね」
(秘密の宝物庫の書庫……確か、そこには、とんでもない魔力が内包された魔導書が数百万冊単位で保管されているとか……)
ゼンドートは、実際に『秘密の宝物庫の中』に入ったコトはないが、ウワサぐらいは聞いたことがあった。
「――『黒の証』というタイトルの哲学書なんだけれどね……興味あるかな?」
「哲学書ですか……いまのこの状況で必要なものではないと思いますが?」
「いやいや、そうでもないのだよ。この書物に書かれている『世界の真理』こそが、あるいは、この世界に魔王が大量発生している理由……ひいては、都市内部に魔王が出現した理由なのかもしれないのだ」
「はぁ……」
「興味あるかね?」
(別にないが……ここで『無い』というと、どんな嫌がらせをされるか分からないからな……)
なんだかんだ、ゼンドートは、
セミディアベルに対してだけはずっと従順だったので、
これまで、一度も嫌がらせを受けたことはないが、
セミディアベルの下についているヤクザ連中が、
壮絶かつ凄惨な嫌がらせを受けているところは何度も見ている。
だから、ゼンドートは、腹の中だけで、大きなため息をつきつつ、
「ええ……まあ、はい。興味が……なくもないですね」
「では、これを読み込んでおくように。そして、今度、君の見解を聞かせてくれ」
その鬱陶しい宿題に対し、ゼンドートは、また、腹の中で、大きなため息をつきつつ、心の中で、ボソっと、
(くだらない……『興味のない本を読んで感想文を書く』……それは、この世で最も愚かで非生産的な時間だ。……はぁあ……しかし、まあ、セミディアベル公爵の命令である以上、取り組まないワケにはいかない。……もし、本当に、『魔王討伐に関わるヒントが得られるのであれば儲けもの』……と、無理にでも前向きに考えるしかないな)
心の中で、ブツブツと文句を垂れつつ、
ゼンドートは、セミディアベルに、
「だいぶ分厚い本なので、時間がかかると思いますが、よろしいですか」
「そうだね。では、期限を10日後にしよう。7月31日、君の見解を聞かせてもらう」
(この量を10日……ふざけているな。わたしなら、読めないことはないが、かなり時間をとられる。……いつ、また魔王が襲ってくるか分からないというのに、まったく……)




