16話 ずいぶんとご機嫌じゃないか(笑)。
16話 ずいぶんとご機嫌じゃないか(笑)。
(17番の供述が全て事実ならば、魔王を倒す戦力として、しっかりと数えることができる。正式に僕の下につけるか……それとも……)
などと、ゼンドートが考えていると、
そこで、コンコンとノックの音がした。
今は、しばらく考え事をしたい気分だったので、
「あとにしなさい! 今は忙しい!」
と、ぶっきらぼうな態度で、少しだけ大きな声を出す。
しかし、
……ガチャ、
と、無礼な扉が開く。
ゼンドートは、眉間にしわを寄せて、
「おい! あとにしろと――」
と、怒鳴りかけたところで、ゼンドートはピタっと止まる。
そして、渋い表情になり、
「せ、セミディアベル公爵……」
公爵の後ろには、ラストローズ辺境伯もついてきていたが、
あんな若造はどうでもよかった。
それよりも、セミディアベル公爵に怒鳴り声をあげてしまったことが大問題。
「やあ、ゼンドートくん。ずいぶんとご機嫌じゃないか。この私を怒鳴りつけるとは、大変、元気があって、結構、結構」
ゼンドートは、ギリっと奥歯をかみしめ、
死ぬほど『ダルそうな顔』をしつつも、
「……申し訳ありません、セミディアベル公爵。まさか、あなたが、こんなところにいらっしゃるとは思ってもいなかったもので」
そう言いながら、立ち上がって、上座をあける。
セミディアベルは、ニコニコと、目の奥が笑っていない笑顔で、
「この私を怒鳴りつけることができるほど高貴な君が上座を譲るべきではないと思うんだが? そこは君の席だ。優雅に腰を下ろしておきたまえ」
「……人の些細なミスをあげつらって、イタズラにいたぶるのはおやめください。セミディアベル公爵。品位を疑われかねません」
「はっはっは、ただの冗談だよ。そんなに不機嫌にならないでくれたまえ」
そう言いながら、セミディアベルは、ゼンドートが空けた席に腰かける。
ゼンドートは、特に何も言わず、ラストローズ辺境伯の隣に立ち、姿勢を正した。
ゼンドートは、プライドが鬼のように高いので、
スーパーフィクサー・セミディアベル公爵が相手であっても、
決して、媚びへつらうようなマネはしない。
しかし、かといって、プライドそのままの傍若無人な態度を示すような事もしない。
ゼンドートは、綺麗な直立不動のまま、まっすぐに、セミディアベルに視線を送り、
「それで、公爵閣下。ここには何の御用で?」
「なに、用事というほどのものじゃない。ただ、『魔王討伐隊』がどんな様子か見てみたかったので視察にきただけだよ」




