13話 あなた様こそ最強!
13話 あなた様こそ最強!
ゼンドートの高速の一閃を、
センは、ギリギリのスウェーで回避する。
ギリギリすぎて、ノド仏がサクっと切れた。
センは、ドクドクと首から流れる血に触れながら、
「剣の腕前も素晴らしい! さすがは天下のゼンドート伯爵! あなたが大公になる日は近いでしょう。いや、もはや、あなた様は、この都市の神である女神ユウガをも超えている! あなた様こそが、この世界の女神!!」
「……この僕を女扱いするとは……どこまでナメれば気がすむ」
「最近は、男と女で区別しちゃいけないらしいですよ。なんでか知りませんが。……『差別しちゃいけない理由』は分かるんですが、『区別しちゃいけない理由』が、アホの僕ちんでは、全然分かりやせんで、困っているところでげす。僕ちん、将来的には、女湯の女子便でうんこしなきゃいけないのかな? やだなぁ」
「命令だ。攻撃を避けるな。黙って死ね」
そう言って、また剣をふるうゼンドート。
すさまじい速度。
17番の身体能力を考えれば絶対に避けられない神速。
だが、『セン(17番)』は、
『だからこそ意味がある』とでも言いたげな顔で、
先ほどのゼンドートとの闘いで研ぎ澄ませた神経の全てを、
さらに鋭利に削り落とし、
ギリギリのギリギリで、
ゼンドートの剣を回避する。
「ぶふぅ……」
極限の集中で止めていた息を吐いて、
センは、ゼンドートに、
「本当に素晴らしいですね。あなたは間違いなく、この巨大都市ユウガで最強だ」
「……」
「そんなあなたが、俺ごときにビビるなんて……あってはいけないこと。それこそ、不敬だ。そう思いません?」
「そのイカれた物言い……どうにかならないのか? イラついて仕方がない」
「こんなものは、ただの病気ですよ。アホが寝言をほざいているだけ。無駄に気にするだけ、あなたの格が堕ちます」
「……はぁ」
ゼンドートはため息をついてから、剣を治めて、
センの『切れている首』に回復魔法をかける。
さほど深い傷でもなかったので秒で治った。
センは、
「マジ、感謝っす」
と、軽薄を煮詰めたような言葉を口にしつつ、
「それで、ゼンドート閣下。『お話』とは、なんですか?」
スルっと本題に移行していく。
もともと、この貴賓室にはケンカをしにきたのではない。
ゼンドートは、一度、セキをはさんで、喉を整えてから、
「……先ほどの、君の拳には、『本物の質量』が込められていたように思う。君には『魔王特効という特異性』以外は何もなかったはず。……見た目通りに幼く脆弱で頭が悪い、一低級召喚士に過ぎない君が……どうやって、あれほどの武を身に着けた?」




