12話 かぶり続けたピエロの仮面が脱げなくなって久しい。
12話 かぶり続けたピエロの仮面が脱げなくなって久しい。
「仮に、17番じゃなかったとして、何か問題あります?」
「あるだろう。普通に。その場合、『貴様はいったい誰なんだ』という尋問をしないといけない」
「俺は『猿の17番』。運命に牙をむく風雅な修羅。ジャスタウェイと同じぐらい、それ以外の何者でもない。それ以上でも、それ以下でもない」
「おちょくっているのか?」
「ピエロは人をおちょくっているんじゃない。無様を生き様にしているだけ。俺もそうさ。かぶり続けたピエロの仮面が脱げなくなって久しい。俺が何を言っているか分かるかい? 俺には何も分からない。俺は雰囲気でしか喋っていない」
「そのナメた口の利き方はなんだ。奴隷から平民に昇格したのは知っているが……まさか、君は『平民は貴族よりも下』だということすら知らないのか? だから、そんなふざけた口をきいているのか?」
「アホなだけですよ。迷走した感情が先走って、言葉を整えることが、稀に良くできなくなる。可哀そうな子羊なんですよ。優しく見守ってあげてください」
「……」
ゼンドートは、だいぶ渋い顔で、しばらくセンを睨んでいたが、
「ふぅ」
自分を整えるように深く呼吸をしてから、
「まさか、本当に別人なのか? 『誰かが変装している』とでもいうのか?」
「キャラ変しただけですよ。ちょうどそういう年頃なんでね。だいたい、この時期に、少年は神話になるんすよ。包帯まいて、眼帯つけて、右手がうずきだして、歴史が漆黒になる。そして、いつしか、大人になった時、恥ずかしさのあまり悶絶してゲロを吐くんです」
ゼンドートは、センの発言の一つひとつを無表情で聞きながら、
その『ふざけた仮面の奥』に、何があるのかを、真剣に探ろうとしていた。
「……それ以上ふざけるなら、不敬罪で首を飛ばす。今回の死刑宣告は、面談の時の牽制とは違う。本気で死んでもらう。平民風情が、大貴族である僕をおちょくるなど、絶対にあってはいけないことだから」
「ヒュゥッ! イカす気迫だぜ、ゼンドート閣下。流石、この世界で最もクレイジーでクールな暴君。あんた以上に冷酷で冷血で冷徹なファンタジスタは全世界を探してもそういねぇ。今後は、畏敬の念を込めて、ガリ○リ君と呼ばせてもらおう。三周まわって、尊敬している感が出るでしょう? ……どうっすか。ここまでバチバチの敬意を示されちゃあ、不敬罪をでっちあげることはできますまい」
「死刑を執行する」
そう言いながら、ゼンドートは、アイテムボックスから、切れ味鋭い剣を抜き、
ギュンと、ほとんど一瞬で距離を詰めて、センの首を跳ね飛ばそうとした。




