2話 7月31日。
2話 7月31日。
(口が悪いですよ、おじいちゃん)
(冗談言っている場合じゃない! 31日まで、あと10日もないんだ!)
(よく計算できましたね、おじいちゃん)
(ちゃんと聞け、センエース。ボクは7月31日からタイムリープしてきた。今回だけじゃなく、ボクは何度もタイムリープをしている。記憶を飛ばせたのは今回だけだけど、アイテムや経験値は何度も過去に飛ばしている)
(記憶がないのに、よく知っているな)
(ダンジョンの宝箱から『タイムリープした記録を映像で確認できるアイテム』を獲得したから、これまでの自分の軌跡に関して、だいたいのことは知っている)
(へぇ……そんなのもあるんだ。じゃあ、タイムリープ自体も、『ダンジョンで得たアイテム』でやった感じ?)
(そうだ。……簡単に説明するぞ。ボクは、この先、たくさんのダンジョンをクリアして、強力な神器を山ほど手に入れる。その中にタイムリープを可能とするアイテム『光銀の鍵』があった)
(光銀の鍵ねぇ……なんか、すげぇ既視感があるな……もしかしたら、俺、記憶をなくす前に、それを、1回か2回ぐらいは使っているかも……)
(タイムリープと言えば『記憶を過去に送る』のが定石だけど、『光銀の鍵』で過去に送れるのは『一部のアイテム』と『経験値』だけで、記憶を送ることはできなかった)
17番は、とにかく早口で、続けて、
(何度も何度もタイムリープを繰り返した果てに、ボクは、どうにか『光銀の鍵』を、『記憶を送ることができるバージョン』である『銀の鍵』へと改造することに成功した)
(で、今回、晴れて、記憶を送ることができました、と。やったね、17番ちゃん。家族が増えるよ)
(減るんだよ、このままだと。……もう鍵はない。『光銀の鍵』を『銀の鍵』に改造したことで『使用制限』のデメリットがついてしまったらしくてね。……銀の鍵は、使った瞬間、完全に砕け散ってしまったんだ)
(……『銀の鍵に改造したら壊れる』というのは最初から知っていたのか?)
(知るワケないだろう。無駄な質問をするな)
(……はい、すんません)
(カギはもうない。時間跳躍には、もう頼れない。チャンスは、この1回だけだ。どうにかしてくれ、センエース)
(どうにかしてくれって言われても、俺、まだ、お前が何でそんなに焦っているか、その理由を一切知らんのだが。9番が死ぬことだけは、最初に聞いたが……)
(ゼンドートだ! 7月31日に、あのクソ野郎が暴走して、この都市にいる人間を皆殺しにする!)




