19話 詭弁と正論。
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19話 詭弁と正論。
「仮に、だ。君が、『咎人に家族を殺された遺族』だとしよう、僕が、その咎人を断罪した時、君は、僕の行動を非難するだろうか? むしろ、称賛するのではないかね? ラストローズやカルシーンは、多角的なモノの見方ができない。その瞬間だけの『可哀そうだ』という『理屈のない感情論』を持ち出して、僕が掲げる『差別のない平等な刑罰』という概念にツバをはく。それは悪だ」
言っていることは、間違っていない気がする。
でも、間違っていないだけのような気もする。
「カルシーンは『咎人にも事情がある』と言うだろうが、事情は罪を薄めたりしない。死刑囚の母親が泣くからといって、刑を見送る法があるか? それはあってはいけないのだ」
「かといって……魔カードを盗んだぐらいで殺そうとするのは……どうなんでしょう」
「痛みなくして更生はない。……それを理解しない『偽善者』たちこそが、僕の敵だ」
「偽善……ですか」
「僕の視点だと、偽善は二種類に分かれる。正しい偽善と、悪にも劣る偽善だ」
(その考え方だけは……よく分かる。ボクも似たような思想を持っているから……この世には、ヘドがでる偽善と、まっとうな偽善の二種類がある)
「過程と最終的な結果にプラスをもたらす言動を『正しい偽善』と呼ぶ。たとえ、それが人間らしい顔を保つための衣装にすぎなかったとしても。正しい偽善は正義の名のもとに赦されるのだ。なぜならば、結局のところ、社会というのは、『結果』こそがすべてだから。だがその逆――己に酔うための虚飾で世界を穢す行いは、『悪にも劣る偽善』だ。『正しい努力を積む勇気がない怠け者』の自己満足で手前勝手な免罪符。――僕は確信する。ソレこそが、この世で最も醜く、最も重い罪だと」
「……」
「僕を『極端な悪』と揶揄する声があることは承知している。しかし、その者らの意見は、どれも現実を見据えていない感情論ばかりで、『理性的な合理』に欠けている。僕を否定するのも結構だが……中身を伴わない反論は、単なる中傷だ」
「燕の5番は……妹の病気を治したかっただけでしょう? 『どうにか家族を助けたいと思っている人間』の目の前に、回復の魔カードをワナとして用意して……食らいついたら殺すなんて、それは流石に……どうなんでしょうねぇ。それを正義だと判断するのは難しいものがあると思いますが? それこそ、質の悪い醜悪な偽善では?」
そこで、ゼンドート伯爵は、こちらに視線を向けて、ボクの目をジっと見つめている。
『意見を続けろ』という意味だと解釈して、ボクは、色々と考えながら、
「――あなたのいう『理性的な合理』っていうのが、どういうものか、アホのボクではイマイチわかりませんが……それが、もし、『ちゃんと考えた上での、人としての正しい行い』みたいなものなのであれば……あなたの極端な判決は、むしろ、合理に欠けているんじゃないでしょうか? しゃくし定規に、100かゼロで分けるというのは、理性的なんじゃなく、機械的なだけで……思考を放棄していると思いません?」
「思わない」




