17話 ボクは詳しいんだ。
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それを記念しての一日10話投稿!!
本日の1話目!!!
ちょっとでも楽しんでもらえたら幸いです(*´▽`*)
17話 ボクは詳しいんだ。
「17番、お前だって伯爵に褒めてもらえていたじゃないか。貴族が、奴隷を……俺らはもう奴隷じゃないが、『奴隷と認識している相手を、貴族が褒める』なんて、あんまりないことだぞ」
「青いな、ミケ。『分かりやすい奇行を繰り返すピエロ』よりも、『一見するとまともに見えるファンタジスタ』の方が、よっぽどヤバい。ボクは詳しいんだ」
「お前の『知ったか』には付き合ってられねぇ」
人が親切に忠告してやっているのに……
この野郎……
「てかさ、ミケさんや……君、今、存在値43?」
「ああ」
「試験の時は20ぐらいだったよね? なんで、数日で倍になってんの?」
「成長期だからな」
「それで済む成長速度じゃないと思うんだけど……」
★
午前中は、いつも通り、普通に基礎トレを繰り返した。
初日はまったくついていけなかったけど、今では、
「はぁ、はぁ、はぁ……15本……よし……半分……」
準備運動の『200メートルダッシュ』×30本。
初日は5本しか走れなかったが、
今では、
「ぶはぁ……はぁ、はぁ……も、もう、無理……っ」
25本目まではなんとかついていけるようになった。
この短期間で、ボクの心肺機能は、単純計算で5倍に上がった。
もともとが低すぎたというのは事実だけど、5本が限界だったのが25本まで成長したのも事実。
その後の基礎訓練でも、初日の3倍~5倍ぐらいはこなせるようになった。
この調子なら、あと数日で、『メニューをこなす』ぐらいはできるようになるかも。
★
昼休みに入ったところで、
ゼンドート伯爵から、『面談がしたい』と、寮の貴賓室に呼び出された。
基礎トレでクタクタなので休みたかったが、
ゼンドート伯爵の命令は無視できない。
下手な対応をしたら、どんな嫌がらせをされるか分からないからね。
しかし、何の用だろうか。
もしかして、秘密裏に処刑されるのだろうか。
『魔王に対して特効の力を持つのは私だけでいい』
……とか、あの人なら言いかねない。
――ノックをして、貴賓室のドアを開けると、
ソファーに座っているゼンドート伯爵は、微動だにせず、深淵を覗き見るような目で、こちらを見ていた。
一秒、二秒、三秒……ややあってから、静かに口を開いた。
「座りなさい」
落ち着いた声で、正面のソファーに腰かけるよう命じてきた。
「すいません……失礼します」
なにが怒りのトリガーになるか分からないので、
ボクは、慎重に、色々と警戒しつつ、ゆっくりと腰をおろした。
「……」
「……」
沈黙の時間が流れる。
え、なに、この時間?
なんか言ってほしいんだけど……
それとも、ボクから切り出さないといけない感じ?
などと、思っていると、ゼンドート伯爵が、
その重たい口を開いて、
「今から君には死んでもらう」




