13話 努力のフィードックがはやい。
13話 努力のフィードバックがはやい。
(つまり、『回復の余白』そのものは存在しているが、分単位・時間単位のスパンにまで圧縮されているんだ)
(オケ。わかった。難しい話は、もういい。もう十分。どーどー。モンジン、リラックス。りらーっくす)
(要因は複合的だ。まず一つは、回復魔法による組織修復の人工的刺激を長年にわたり受け続けたこと。これにより、損傷部位でのサイトカインの分泌やマクロファージの挙動、サテライト細胞の活性化といった反応が、半ば常態化している可能性がある)
(わかった。完全に理解した。だから、もう――)
(加えて、周囲のマナ環境――つまり、大気中に高密度に分布する場のエネルギーが、皮膚・粘膜・肺胞・消化管などの各吸収経路から恒常的に取り込まれており、疑似的な低出力の治癒系魔法効果を常時発現している状態にある。言い換えれば、この世界の人間は、微小な損傷に対しては『意識的な回復行動』を取らずとも、環境的・身体的に『デフォルトで治癒モード』に入っているわけだ。お前の前世である第一アルファの生理学的常識とは、根本から仕様が違う。――結論を言うと、努力のフィードバックが早い)
(もういいって言ってんだろ! ボクの顔を見て分かれ! ウンザリしているだろ! 細かい理屈とかどうでもいいんだよ! 『異世界転生したから、体もいい感じに変わったんだね、やったね』でいいんだよ! 『なろう』を見ろ! こんなウダウダと理屈をこねている異世界作品なんてほぼねぇよ! ステータスオープンって言ったら、ステータス画面が開く! それでいいんだよ! その裏で、どんな仕組みが働いているかとか、興味ねぇんだよ!)
と、ボクが心の中で、モンジンに文句を叫んでいると、
9番が、
「昨日と比べたら、今日は体調が良さそうですね」
「浅いな、9番。これは、リモデリングのマイクロダメージがサイトカインのデフォルトでパルシのファルソがパージーでコークンのソーセージなんだ」
「……なるほどー、深いですね。さすがセンパイ」
「9番……お前の、その高い『気遣い力』は、時にボクを傷つけるな……」
★
9番と朝食をとっていると、
机の上に、リス型のマパネットが現れて、ソっと紙を置いて消えた。
この『ボクじゃなきゃ見逃しちゃう、おそろしくはやい置手紙』にもだいぶ慣れたな。
中身を確認してみると、いつも通り、アバターラの近況がびっしりと書かれている。
今回も、また、どうでもいいことが多い……
アバターラと、5番姉妹が仲良くなっているとか、知らん、知らん。




