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26話 不満の大合唱。


 26話 不満の大合唱。



 ――『2の紙を持っている不合格者』たちは、

 いくら騒いでも騒ぎ足りないといった感じで、



「ふざけるなぁ!」

「ナメんじゃねぇぞ!」

「殺してやろうか、このクソジジイ!」

「どうなってもしらねぇぞ!」

「冒険者試験を受けるのに、いくら払ったと思っている!」

「こっちは、予選のダンジョンで希少なアイテムを使わされているんだぞ!」

「一次不合格なんて結果じゃ帰れねぇんだよ!」



 と喚いている。

 大合唱になる不満の声。


 そんな喧騒の奥で、

 センは、のんびりと趨勢すうせいを見守っていた。


(こういう事態になる事は予測できたはず……さて、冒険者試験を仕切っている委員会は、ここから、どう動くつもりかな……)


 ――『流石に、このまま終わりではないだろう』と予測をたてて、高みの見物を決め込んでいるセン。

 と、そこで、センが持っている紙を覗きこんできたシューリが、


「おやおや……お兄、不合格じゃないでちゅか」

「……っぽいなぁ」


 その会話を聞いたアダムが、真剣な表情で、


「主上様、私の紙と交換いたしましょう。冒険者試験如きで主上様が落ちるなど、あってはなりません」

「それは無理っぽいぞ。解析してみたんだが、どうやら、誰が受かって誰が落ちたか、ちゃんとデータが残っているっぽい。この紙は、リトマス試験紙の役割と結果報告、それにプラスして、データ転送と処理の能力もある。なかなか質の高いアイテムだ」

「あ、そうなんでちゅか? てっきり、ここから、1と書かれた紙を奪い合うのかと思っていまちた」


「俺もそうだろうと思っていたんだが……どうやら違うっぽいな」



 センたちが話している間、止まることなく、ずっと、ブーイングは続いていた。


「ちゃんと説明しろ!」

「合否の基準はなんだ!」

「なぜ、俺に2が配られて、こいつらが1なんだ!」


 落ちた受験生たちの不満を聞いたメービーは言う。


「説明されなければ分からない時点で失格なんじゃが……まあ、一応、教えておいてやろう」


 黙って文句を聞いていたメービーが、ボソっとそう言うと、

 場は一斉に、シンと静まり返った。

 ここに集まっているのは、全員、一応は、予選を通っている者。

 状況が見えず、ただいつまでも喚き続けるようなバカは少ない(まだ一次なので、そういうバカが一人もいないワケじゃないが、レアなバカどもも、さすがにここでは黙る)。


 メービーは、ためることもなく、

 サラっと、



「一次試験の内容は『運』じゃ」



 そう言い切った。


 全員の頭に、『うん……?』という疑問符が浮かぶ。



「今回の受験生は306人。1と書かれた『合格できる紙』の枚数は、受験生数の約半分、150枚。運も実力のうちとよく言うじゃろう? 二分の一を外すような不運野郎は実力不足と判断させてもらう。冒険者試験は、実力者を見極める試験。実力が足りていない者に用はない。というわけで、無能は、とっとと、おうちに帰りなさい」


 非常に丁寧な説明を受けて、メービーの言いたい事を、100%理解した受験生たち。


 ――あなたは、『運』が悪かった。

 ――運が悪いと言う事は、実力がないという事です。

 ――だから、不合格です。

 ――残念!


 そんなイカれた事を言われて黙っている者などいる訳がなく、

 『2と書かれた紙を持っている不合格者』の大半が、先ほどよりも更に沸騰した。

 真っ赤になって叫ぶ不合格者たち。


「なに、アホなこと言ってんだ、てめぇ!」

「運も実力のうち?! そりゃそうかもしれんが、しかし、運がないから実力がないってことにはならねぇだろぉ!」



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