5話 セン。
5話 セン。
『ナンバーネームを名乗れる』のは『ボクだけ』にしたい。
――というわけで、将来的に、ボクが権力を握ったら、奴隷がナンバーネームを名乗るのを禁止しようと思う。
「お前の思考は、マジで、一切理解できねぇ」
20番は、バカを見る目でそう言ってから、
「ちなみに、なんて名前で登録したんだ?」
「セン」
「へぇ。意味とかあるのか?」
「特になにも。パっと思いついただけの二文字。名乗る気がないんだから、テキトーでいいだろ」
意味を聞かれたことで、なんとなく、今、気づいたけど、
センって名前にした由来は、
たぶん、アバターラが叫んだ拳の名前だ。
『閃拳』……
だっさい必殺技名……
けど、なんでかな……
なんか、心に残っている。
★
10分程度の休憩を終えて、
また基礎トレが再開された。
両手両足に、5キロの重りを付けた上での持久走。
10キロを1時間で走れと言われたが、ボクは15分弱でギブアップ。
もし、ボクを笑うやつがいたら言ってやる。
やってから笑え!
全力の200メートルダッシュを5本走ってから、5キロの重りをつけて15分走ってみろ!
運動不足の人だったら、絶対にゲロ吐くから!!
……流石に、みんな、これは走り切れないだろう……と思ったが、
ボク以外は全員、ちゃんと走り切ってみせた。
みんな、苦悶の表情を浮かべているけれど、まだ、体力的に余裕がありそう。
すげぇな、マジで。
マジか、あんたら……
みんなのことが、異世界人に見えてきた。
(そんな安いボケで、ツッコんでもらえると思うなよ)
モンジンが、なんかほざいている。
ボクは気にせず、ゲロを吐く。
――続いて、連続斬撃訓練。
『老界○神でも入ってんのか』ってぐらい『クソ重たい木刀』を左右上下に30秒フルスイングして、10秒休憩して、また30秒フルスイング……というのを50セット。
当然50セットもできるわけがなく、ボクの腕は5セット目でパンパンになって感覚がなくなった。
ほかにも、腕、首、腰、腹、背を鍛える基礎トレを30分ずつ濃密に繰り返した。
全てのトレーニングで、ボクは『序盤に死んだ』けど、それでも、全身バキバキ。
最初は、監督役のカルシーン伯爵に『もっと頑張れ』と怒られていたが、
もう、ここまでくると、カルシーン伯爵も、何も言わなくなっていた。
ただただ、冷たい目で睨んでくるばかり。
奴隷だった時に助けられたことがあるので、
ボクは、カルシーン伯爵に好意を持っていたけれど、
今回、しごかれたことで、普通に嫌いになってしまった。




