4話 『猿の17番』って名前、カッコよくね?
4話 『猿の17番』って名前、カッコよくね?
家事と仕事をするだけでも、余裕で大変だから!
その上で道場に通ってトレーニングを積んでいる20番が異常なだけだから!
ボクは普通!
むしろ、ボクは頑張っている!
ボクは、奴隷だった時、ずっと、家事と仕事をこなしながら、馬小屋でワラを敷いて寝ていたんだ!
それも、週5じゃなく、週6でだぞ、ボケ、カス、ごらぁあ!
ナメんなよ!
つぅか、そうだよ!
まだ成りたてだから忘れていたけど、ボク、『平民』にあがっていたんだった!
20番の野郎……奴隷の分際で、よくもボクにナメた口を叩きやがったなぁ……
万死と極刑に値する!
「20番、言っておくが、ボクは今日、平民になったんだ。下賤な奴隷の貴様とは格が違うでおじゃる。平伏し奉れ!」
「あのなぁ、17番。お前が平民になれたってことは、俺もなれる条件はそろっているってことだぜ。年収100万と住居を確保していて、昇格試験も免除。だから、当然、俺も、申請書を出している。『図々しさだけは平均を超えているお前』みたいに、ラストローズ辺境伯に口利きしてもらったワケじゃないから、まだ申請が通ってないだけで、俺も、数日以内に平民にあがる。つまり、俺は別にお前の下じゃねぇってこと」
「平民にあがるのは数日後の話で、今はまだ奴隷だろうが!! 階級社会の闇をナメるなよ! さあ、奴隷よ! 平民様であるボクのクツをなめろ!」
「お前なぁ……スペックと顔だけじゃなく、性格まで下の下になったら、いよいよ終わりだぜ」
と、一度呆れたように溜息をついてから、
20番は、ボクに、
「ちなみに、お前、名前は?」
と聞いてきたので、ボクは、
「猿の17番です。はじめまして」
「知っとるわぁ、ボゲぇ」
と、20番は、巻き舌で一瞬キレてから、
「……平民に上がったんなら、ナンバーネームじゃなくなるだろ。なんて名前にしたんだ?」
「受付の人に、『絶対やれ』って言われたから、一応、登録はしたけど、ボクは、猿の17番のままでいい。これからも、猿の17番として生きていく」
「はぁ? なんで?」
「ボク、この名前、気に入っているんだよ。いい感じに滑稽でロックでパンクでイカしてる」
気に入らないことばかりの転生人生だったけれど、
この名前だけは、最初から、ずっと、かなり気にいっていた。
叶うなら、『ナンバーネームを名乗れる』のは『ボクだけ』にしたいんだよなぁ。
こういう特殊な名前は、たった一人だけが名乗るからこそ味に深みがでる。




