3話 サボってきた人生?
3話 サボってきた人生?
え、今からボク、6キロもダッシュすんの?
嘘だろ?
ボク、死ぬぞ。
いいのか、ボクが死んで。
ボクが死んだら、ボクは絶滅するんだぞ。
なんて風に、心の中で、いくら不満を垂らしても、
カルシーン伯爵が前言を撤回してくれることはなかった。
「位置についたな。よし、では一本目!」
こうして、マジで普通にガチで始まった、200メートルダッシュ。
結論から言うと、5本目が終わったところで、ボクは死んでいた。
30本なんか走れるかボケ!
11歳の四頭筋をナメるなよ!
★
驚くべきことに、ボク以外のメンバーは、
みんな、普通に30本、走り切っていた。
倒れこんでいる者が何人かいるが、
ボクのようにに、『5本目で死ぬような雑魚』は一人もいなかった。
ちなみに、ボクの同期である20番は、まあまあ涼しい顔をしていた。
「20番、お前、すげぇな。めちゃくちゃ体力あるじゃねぇか」
「17番、お前、すげぇな。めちゃくちゃハナクソじゃねぇか」
20番は、サクっとボクを侮蔑してから、続けて、
「17番よ……もしかしてだけど、お前、これまでの人生で、まったくトレーニングとかしたことないんじゃないか?」
「仕事は頑張ったよ。あと、家事も頑張った。買い物袋とか、だいぶ重かったなぁ。あれは、もはや、トレーニングといっても過言じゃないよねぇ」
「……やっぱり、何もしていないのか。まあ、でも、そうじゃなきゃ、1キロそこら走っただけで、あんな死にそうな顔できねぇよな。情けないやつだぜ。それで、よく魔王討伐隊に入ろうと思ったな」
「ちなみに、20番……きみは、これまで、どんなトレーニングをしていたの?」
「普通に『道場』に通って、基礎トレとか、戦闘訓練とか受けていたぜ。お前に負けるまではテキトーにサボっていたが、あの日以降は、だいぶガチで磨いてきた」
「道場かぁ……看板が出ているのを見たことはあるけど、中に入ったことは一度もなかったなぁ。なんせ、仕事と家事で忙しかったからねぇ。とっても、とっても忙しくて、毎日、血反吐を吐いていたからねぇ」
「俺だって奴隷だから、普通に、仕事も家事もやってるっつぅの」
「……く、くそがぁ……」
ついに、情けなさのあまり、ボケることすら出来なくなってしまった。
同期が『優秀』で『頑張っている』という、この現状。
もしかしたら、ほかの何よりの地獄かもしれない。
このままだと、なんか、ボクが『人生をサボっている怠け者』みたいな雰囲気になりそうだから、一応、言っておくけど、家事と仕事をするだけでも、余裕で大変だから!




