最終話 めでたし、めでたし。
最終話 めでたし、めでたし。
「無駄にダラダラと悩むような『判断力に問題のある者』は必要ない。この場で決めてもらう。覚悟の決まった者から、私のもとにきなさい。志願しない者は、そのまま帰ってもらって結構。言うまでもないことだが一応言っておく。今日、見聞きしたことは絶対に黙っておくように。イタズラに流布した者は、治安維持のため、問答無用で極刑に処す」
ラストローズ辺境伯が、そう言い終わると同時に立ち上がる者が半数。
悩んだ顔で座ったままの者が半数。
立ち上がった者の中の何名かは、ラストローズ辺境伯に背を向けて帰宅していった。
魔王討伐隊に入った際の死のリスクを考えれば、それも当然の決断。
むしろ、ラストローズ辺境伯のもとに向かっている者の方が異常。
「志願いたします! ぜひ、俺を、魔王討伐隊のメンバーに登用していただきたい!」
最初に志願したのは、ボクの幼馴染と言ってもいい知人、猿の20番だった。
あいつ、根性あるなぁ……
まだ若いから、考えが足りないだけかもしれないけど。
頭が良いからといって、『無鉄砲じゃない』とは限らない。
無根拠の自信とか、理屈のない正義感とか……そういうのは、むしろ、性能が高いヤツの方が、無駄に備えているもの……だったり、なかったり……
座って悩んでいた者たちも、次第に結論を出して、帰るなり、志願するなり、それぞれの道を選ぶ。
最終的に、30人ぐらいが魔王討伐隊に志願するコトとなった。
「猿の17番……きみは? もう、決断していないのは君だけだ。残り時間は20秒」
「え、あ、ボクも、わざわざ志願宣言する必要ありました? さっき、勇敢にも魔王へと挑み、そして、見事、致命的な一撃を与えた、このボクが?」
「余計なことは言わなくていい。どうするんだ?」
「もちろん、志願しますとも。大船に乗った気でいてください。ボクが所属したことで、魔王討伐隊は史上最強の組織になりましたよ。よかったですね」
「……自信があるのはいいことのはずだが、君を見ていると、そうではないのかもしれないと思ってしまうな」
ラストローズ辺境伯が、しんどそうに、そうつぶやいたことで、
この場に残っている志願者たちが一斉に声を出して笑った。
志願者の中の何名かが、ボクに、
「多少は頼りにしているぞ、17番」
「お前のカマキリは、かすかな希望……と言えなくもない」
「今のお前のままだと、魔王の攻撃がかすっただけで死にそうだから、先天的なスペシャルに頼るだけじゃなく、ちゃんと体も鍛えろよ」
余計なお世話だ。
ダンジョンで山ほどモンスターを倒したりとかしているけど、
なんでか、まったく成長してくれないんだよ、この体。
などと、心の中で文句を言いつつ、
ボクは、志願者たちの輪の中に入る。
こうして、ボクは、
『年収100万以上の職』と『住所』という、
『平民になるために必要な要素』を全て手に入れた。
問題なく平民に昇格したボクは、
その後も、いい感じに魔王を使い、
どんどん出世して、
そして、最終的には大公の地位まで上り詰めましたとさ。
めでたし、めでたし。
ここまで、センエース神話を愛してくれた読者様へ。今日まで、本当に、本当にありがとう!
6年と10カ月……バカみたいに必死に駆け抜けてきて、大変なこともたくさんありましたが、なんだかんだ、嬉しい事の方が多かった印象です。
『センエースを読むことが生き甲斐だ』と言ってもらえたこともあって、本当に嬉しかった。
センエースを好きになってくれた全ての読者様へ、最大級の感謝を!!!
こんな限界ギリギリまで頑張ることができたのは、たくさんの応援があったからです!
本当にありがとうございました!!!




