175話 人類を守るための盾となり剣となる。
175話 人類を守るための盾となり剣となる。
「なるほど、自覚していないパターンか。面白い個体だ。いずれ、貴様は、こちら側に引きずり込みたいな……」
だいぶ難しい『フリ』がきたんですけど。
事前に打ち合わせしていないと無理な台本だろ、それ。
なんて言えばいい?
これ、ボク、何て言えばいい?!
(ヘイ、モンジン。ボクはどう答えればいい?)
(……『ナメるな! ボクは魔王にくみしたりしない! 心で師と仰いで尊敬している大貴族ラストローズ辺境伯閣下様と共に、人類を守るための盾となり剣となる! さあ、かかってこいよ、人類の敵め! ここにはボクがいるということを教えてやる! このボクこそが、命の意味だ!』――)
(長いなぁ……覚えられないよ、そんな長いセリフ。……最後の『命の意味だ』とかも、ワケわかんないし、そもそも全体的に熱血すぎてクサいし、あと、辺境伯に媚びすぎじゃない?)
(お前のために修正するのも面倒だ。てめぇで勝手に推敲しろ)
(……とりあえず、否定すればいいんだよね……だったら……)
そこで、ボクは、頭をフル回転させて、
「ボクが、そっち側につくことはないよ。あまりナメないでほしいね。まあ、人類側が、あまりにも、ボクを蔑ろにしてきたら、分からないけれどね。いい感じのところに就職できたら、もちろん、人類を裏切るような真似はしないだろうけれどね。ねっ!」
そう言いつつ、ボクは、チラっと、わざとらしく、ラストローズ辺境伯に視線を送る。
辺境伯は、渋い顔でボクを見ていた。
あの顔を見た感じ、多分、ボクの意図は伝わっている。
ボクは、ゼラビロスに視線を向けて、
「さあ、行くぞ、魔王! ボクの魔王特効が乗った感じがしないでもないネオカマキリ・ウルトラインセクトの一撃を受けるがいい!」
命令して、ネオを突撃させる。
今回の追撃も、ゼラビロスは黙って、腕で受け止めた。
ザクっと、ゼラビロスの腕に深い傷が刻まれる。
「この傷の深さ……やはり、マグレではなく、魔王特効が乗っているようだ……興味深い」
そう言いながら、ゼラビロスは一歩、後ろに下がって、
「そろそろ時間だ。……また会おう……特異な力を持つ者よ」
そう言いながら、スゥっと、世界から消えていく。
それを見て、ラストローズ辺境伯が、
「き、消えた……不可視化の魔法か? それとも、この都市から消えたのか……」
周囲を警戒しつつ、グルグルと頭を回転させている様子。
「……『そろそろ時間だ』と言っていたのは、活動制限時間のことを言っているのか? ……それとも……」




