174話 ボク、いっつも泣いてんな。
174話 ボク、いっつも泣いてんな。
何してんだ、マパネット……と、思っていると、ゼラビロスが、
「ほう。ウルトラインセクト化を果たしたか。随分と珍しい場面に出くわしたな」
ウルトラインセクト……ってなんだっけ……
なんか、前にどっかで聞いたことがあるような、ないような……
(マジか、お前。ダンジョン探索している時に教えてやっただろうが。虫種のモンスターは、ごくまれに、特殊進化をして強くなることがあるって。マジで、どんな記憶力してんだ)
(一回聞いただけで覚えられる頭脳があれば、ボクは、バカ公立の東高じゃなく、超進学校の赤高に行っていたよ。偏差値が低い人間に、質の高い記憶力を求めないでくれ)
授業を一回聞くだけでも覚えられる人もいるそうだが、
ボクはそうじゃない。
なんて思っていると、
ゼラビロスが、
「ウルトラインセクト化を果たしたといっても、元がネオカマキリでは話になるまい。所詮は――ぬぉっ!」
話している途中で、『ネオカマキリ・ウルトラインセクト(マパネット)』が、
ゼラビロスの腹部を、カマで切りつけた。
すると、魔王が、
「がはっ」
と、血を吐きだした。
……いや、あの、魔王くん達さぁ……勝手に、色々やるの、やめてくれない?
やりたいこと、なんとなくわかったけど……ボクを置き去りにするのはやめてくれ。
蚊帳の外すぎて、泣きそう。
……ボク、いっつも泣いてんな……
――ゼラビロスは、斬られた腹部を押さえながら、
「……ほう。素晴らしい。私のボディに傷をつけ、さらには複数の状態異常効果を付与してくるとは。……なかなかレジストしきれない、この感じ……まさか、貴様は、召喚獣をカスタムするスペシャルだけではなく、魔王特効のスペシャルも持つのか?」
なんか、どんどん話が進んでいる。
え、これ、肯定すればいいの?
……するよ?
その設定、丸のみするからね。
(いや、待て、17番。知らなかったことにしろ)
(へ?)
(もし、お前が、自身の『魔王特効』に関して知っていた場合、なぜ、それを試験の場でアピールしなかったのかという話になる。……『言っても信じないだろうから』という言い訳もできるが、少し弱い)
(あ……はい。かしこまりました)
なんか、ボク、ただの操り人形だな……
なんとなく、船○吉兆の記者会見を思い出す……
ボクは、コホンとセキをして、喉を整えてから、
「いや、ボクに、魔王特効のスペシャルとかは……ないんじゃないかなぁ……少なくとも、ボクは、自分がそれをもっているとは認識していないんだけど……」




