171話 砕け散れ。
171話 砕け散れ。
そこで、さらに、ラストローズ辺境伯が、
「この状況だから、仕方ない! 17番! ムリはしなくていいが、君も、できる限りの支援をしてくれ!」
そのオーダーに、ボクは、
「あのー、もし、魔王との闘いで、ちょっとでもいい結果を出せたら合格にしてくれます?」
「状況を考えろ! そんなことを言っている場合か! 生き残れなければ、全員、死ぬんだぞ!」
「まあ、そうですけど……」
ちなみに7番は、ボクのブレーンで、
99番は、アバターラの狂信者。
そして、ボクは、アバターラの本体。
ラストローズ辺境伯は、実は現状、味方が一人もいないという、だいぶ不憫な状況。
全員に裏切られているけど、ラストローズ辺境伯だけ、その事実に気づいていないという、滑稽を通り越して、だいぶシュールな画。
「くそっ……7番だけではなく、地下迷宮研究会のメンバーもつれてくればよかった……いまさら言っても遅いが……っ」
と、後悔を吐き捨ててから、
「私を盾にすることを許可する!! どうにか生き残るんだ! 行くぞぉおお!!」
そう叫びながら、魔王に突貫。
ラストローズ辺境伯の、こういうところは、素直に尊敬する。
本物の貴族としての矜持。
こういう人ばかりが権力の中枢にいるなら、ボクも、平民や奴隷でいいんだけどねぇ。
などと、そんなことを考えつつ、
ボクは、ゼラビロスに、目配せをする。
ゼラビロスは賢い魔王だから、状況は理解しているだろう。
ここで大事なことは、ボクが合格すること。
だったら、ボクが取るべき手は……
「砕け散れぇえええ!!」
ラストローズ辺境伯が、ゼラビロスの全身を一刀両断しようと、渾身の全力斬りをぶちかます。
ゼラビロスは、あえて、それを避けずに、頭で受け止めた。
ギィイイイン!!
という、『硬すぎる金属が剣を弾くような音』が響き渡る。
ラストローズ辺境伯の腕が痺れ、剣にヒビが入ったが、
「うぉおおおおおおおおおお!!」
辺境伯は、さらに気合いの入った叫び声を上げて、
何度も、何度も、魔王に剣を打ち込んでいく。
ただ、無意味。
ゼラビロスは、一切ダメージを負っている様子がなく、
ただ黙ってジっとラストローズ辺境伯を睨んでいるばかり。
「く、くそぉおお! こんなにも! こんなにも遠いのかぁああ!」
彼我の実力差があまりにもかけ離れている……という事実を前にして、しっかりと絶望しつつも、ラストローズ辺境伯は手を止めない。
「それでもぉお! 私は負けるわけにはいかないんだよぉお! 私は、この都市の大貴族! この都市を守るための剣だからぁあああ!!」




