167話 異次元の努力。
167話 異次元の努力。
(17番……お前が初めてアバターラを召喚した時、アバターラの戦闘力は、お前とトントンだった。身のこなしも、足さばきも、体軸の歪みも全て同じ。つまりは、明確に雑魚だった)
(不愉快な評価だけど、文句はないよ。実際、ボクは弱いから)
(……だが……今のアバターラは『素人にしては、かなりマシ』というレベルになっている。たった一日、目を離しただけで……)
(だから、それは、なんで? なんで、アバターラの戦闘力は上がっているの?)
(そりゃ、努力したからだろ)
(いや、努力って……)
(よく見ると、目の下にクマが出来ているし、全身のエネルギーが枯渇している感じがしている。……おそらく、アバターラは、10番を誘拐している間も、ヤクザを壊滅させ金品を強奪している間も、お前がグースカ寝ている間も、お前がアホ丸出しでテストを受けていた間も、ずっと、一秒たりとも休むことなく鍛錬を積んでいた。なぜ、断言できるかって? 俺なら、そうするからだ)
(た、鍛練したって言っても……昨日今日で、そんな強くなれるものなの? 普通、武道の強さって、何年もかけて、ちょっとずつ強くなるものじゃ……)
(まったく下地がない奴なら、そうだろうな。基礎を固めるだけでも数十年かかるだろう)
(だろう? なのに、なんで――)
(ということは、つまり、積んできたんだろうな、俺は。……まったく覚えちゃいないが。……たぶん、おそらく、きっと、俺は、バカみたいに長い時間をかけて武の基礎を積んできている。だから、『お前のステータス』というゴミみたいなハンデを背負っても、どうにか舞えている……ってことだろう。たぶん。知らんけど)
(……)
ボクがモンジンの自分語りを聞いている間、
アバターラは、ラストローズ辺境伯と、バチバチのタイマンを張っていた。
アバターラは、ちょくちょく、ラストローズ辺境伯に拳や蹴りを当てている。
だが、攻撃力が足りないせいか、ラストローズ辺境伯は、直撃をくらっても、気にすることなく、反撃をしている。
「よっと……おお、あぶねぇ。今の攻撃はなかなかだったぜ、ラストローズ少年。10点をくれてやる。『100億点』満点中のな」
「上からものを言うなぁあ! 余裕ぶっているが、ほんとは余力なんかないだろう!! 顔が疲弊しているし、動きも鈍ってきているぞ!」
「青いな。大局が見えてねぇ。……よぉし、先に絶望感を与えておいてやろう。どうしようもない絶望感をな」




