166話 鍛錬が足りない。
166話 鍛錬が足りない。
ボクのステータスはマジでゴミ。
生身で、ラストローズ辺境伯と戦えば、一瞬で細切れにされる。
……なのに……なんで……
「避けるなぁああ!」
と必死の形相で叫びながら剣を振り続けるラストローズ辺境伯。
それに対し、アバターラは、ニタニタと笑いながら、
「アホか、お前。避けなきゃ死ぬだろうが」
そう言いつつ、ラストローズ辺境伯の剣を紙一重のところで回避すると、
アバターラは、グっと拳を握りしめて、
「閃拳!!」
ギュンと加速するように腰を回転させて、
握りしめた拳を、ラストローズ辺境伯の顔面にドガっとたたきつけた。
「ぐぅ!」
その衝撃で、ラストローズ辺境伯は、後方に数メートルほど吹っ飛ぶ。
ただ、見た目ほど大きなダメージは通っていないようで、
辺境伯は瞬時に体勢を整え、片膝で着地すると、
――キっとアバターラを睨み、
「……ふんっ! ……なかなかの速度の拳だが……パワーがまったく足りていないな! その程度で、私を倒せると思うなよ!!」
「そうなんだよなぁ……ステータスがゴミすぎるのと、まだまだ練度が足りないから、お前クラスが相手だと、話にならねぇ。もっと、鍛練しねぇとなぁ」
などとほざいているアバターラを見つめながら、
ボクは、モンジンに、
(なにこれ、なにこれ? ねぇ、なんで? モンジン、なんで、アバターラは、ラストローズ辺境伯と戦えているの? ボクの存在値じゃあ、絶対にムリだよね? だってボクは存在値9で、辺境伯は150だよ?)
(確かに数値は、ゴミ以下でしかない『お前のコピー』のままだが……『戦闘力』が……爆上がりしている。……それに、あの拳に込められたアリア・ギアス……あのダサさ、あのみっともなさ……俺に何かを思い出させる……)
『戦闘力』という概念自体は、ボクも知っている。
簡単に言えば、同じ存在値同士が闘った時に、どちらが勝つかの指標。
『格ゲー』での強さみたいなもの。
ゲームバランスが崩壊してない限り、格ゲーのキャラクター性能は、ほとんど差がない。
勝敗は、完全にプレイヤースキルだけで決まる。
ようするに、戦闘力とは、そういうこと。
あくまでも指標なので、存在値みたいに数字化することは不可能。
かつ、体調・環境・相性によって、大きく変動する。
戦闘力に大きな差があれば、存在値に3倍くらいの差があっても、どうにか戦える……という話は聞いたことがある。
『戦闘力が超強い存在値10』と、『戦闘力が低い存在値20』が闘えば、高い確率で前者が勝つ……みたいな感じ。




