165話 道徳の奴隷は眠らない。
165話 道徳の奴隷は眠らない。
バッサリと切り捨ててきた。
マジかよ……
エグ……
泣きそう……
てか、ちょっと涙が出てる。
男の子だもん……
などと、マジでショックを受けていた……
と、その時、
「はっはー、元気いいねぇ。何かいいことでもあったのかい?」
突如として、この場に現れた第三者。
彼の名は……魔王使いのアバターラ。
あいつ……なんで、ここに来たんだ?
ちなみに、ボクは、アバターラをここに呼んでいない。
アバターラがここにいるのは、あいつの勝手な判断だ。
……あいつ、自由すぎないか?
「俺を討伐しようって? 浅はかだぜ、その思考。けちらしてやるよ、容易くな」
アバターラの顔を見た瞬間、ラストローズ辺境伯は、真っ青な顔になり、
「あ、現れたな! 『道徳の奴隷』め!!」
叫びながら剣を抜く。
魔王使いに対する恐怖が心に刻まれていながら、それでも、勇気を叫べるラストローズ辺境伯のことは、素直に尊敬できた。
――ちなみに、周囲の受験生たちは、何が何だか分からず困惑している。
だが、今のラストローズ辺境伯には、彼らに説明している余裕はない。
ボクには、その余裕があるけど、説明する義理がないんでね。
ここはしばらく静観させてもらう。
――『道徳の奴隷』こと、ボクの分身アバターラは、渋い顔で、
「……『道徳の奴隷』って……そのネーミングが定着するの、イヤだなぁ。……俺のことは、『魔王使いのアバターラ』と呼んでくれ」
「……自分で名乗っておいて」
まっとうな指摘を受けたアバターラは、苦笑して、
「最初に、『道徳の奴隷』と名乗ったのは、確かに俺自身だけど、まさか、それが、こんなにしつこくピックアップされると思わなかったんだもん。単なる1ボケを執拗にコスられ続ける、こっちの身にもなってくれ。その点に関しては深く陳謝するから、いったんなかったことにしてほしい。……望むなら、土下座でもなんでもするから」
「ナメたことを!! 死ねぇ! 貴様さえ死ねば、魔王が都市内部で暴れることもないだろう!!」
叫びながら、ラストローズ辺境伯は、アバターラに斬りかかった。
ボクは、てっきり、アバターラが『魔王ゼラビロス』を召喚して、ラストローズ辺境伯の攻撃を防ぐものだとばかり思っていたのだけれど、
「ふふん、へいへいへい、どうした、どうした」
アバターラは、魔王を召喚しなかった。
普通に、ラストローズ辺境伯の攻撃を、ニタニタ笑いながら、スルスルと避けている。
……え、なんで?
アバターラは、見た目こそ全然違うけど、ステータスはボクと同じはずなんですけど?




