156話 二つの切り札。
156話 二つの切り札。
そんな20番の言葉を聞いたボクは、神眼モノクルを取り出して、彼の強さを見てみた
――存在値21。
マジで、とんでもなく強くなっている。
この前までの20番は、存在値10ぐらいだったはずだ。
「20番……きみ、強くなりすぎじゃない? この前の大会から、まだ10日も経ってないけど?」
「死に物狂いで特訓したら、ちょっとコツを掴んでな」
「えぇ……なに、その天才発言……」
「言っておくけど、俺はまだまだ強くなるからな。最終目標は貴族。俺の才能があれば、夢が叶う日はそう遠くない!」
「え、20番って貴族を目指していたの?」
「目指していたのは平民だが、これだけ才能があるんだから、貴族を目指すべきだろ」
「……まあ、そうだね……確かに、君は、思った以上に才能があるみたいだから、このまま伸びれば、いけるかもね」
「俺が貴族になったら、お前を雇ってやるよ、17番」
「ありがたいオファーだけど、残念ながら、20番が貴族になるより、ボクが貴族になる方がはやいだろうね」
「はははは」
「なにわろてんねん」
――と、そこで、場の空気がピリっとした。
ラストローズ辺境伯が登場したからだ。
ここ最近のあれこれで、だいぶ見慣れたけど……でも、やっぱり、威圧感を感じるなぁ。
人類最高クラスの超人ラストローズ辺境伯。
バカザコ無能のボクと、ちょうど対極にいる天才スーパーエリート。
格式高い軍衣を纏い、無駄のない動作で壇上に立ったラストローズ辺境伯は、
『拡声』の魔法を使い、場内の隅々まで声が響くようにしてから、
「前置きは抜きにして、最終試験の内容を発表する。今から、君たち全員で、私に挑んでもらう」
その言葉を受けて、周囲がザワザワしだす。
「辺境伯に……挑む……だと……」
「そんなの、一瞬で殺されるだけじゃ……」
「運がよくても、大ケガは免れない……」
と、ざわつく受験生たちの動揺を一蹴するように、
ラストローズ辺境伯は、
「ルールを伝える。私は一切攻撃しない。全員で協力して、私を殺してみろ。もし、私を殺すことができたら……この場にいる全員合格だ」
それを聞いて、受験生の一人……屈強な肉体の男が、ボソっと、
「だ、大貴族を殺めたりしたら……こっちも首を飛ばされる……」
「無駄な心配はしなくていい。君たちごときが束になっても、私を殺すことなど不可能だ。今回の試験で予定している合格者数は20人以下なんだが……もし……ありえない話だが、もしも、万が一、私を殺すことができたら、『特別に全員合格にする』という特殊ルールについて言及しているだけ」




