153話 黒猫の99番を血祭にあげろぉお!!
153話 黒猫の99番を血祭にあげろぉお!!
「はぁ……」
ため息交じりに、ボクは、仕方なく、
「あの、審判。すいません。棄権します。あんな裏社会のバケモノが相手じゃ勝てるワケないんで」
と、戦闘放棄を申し出たのだが、
審判は、
「そうなると、採用試験そのものを放棄することになるが、それでも異論ないな?」
「ぇえ……なんで、そうなるの……」
「この『負け残り試験』では、勝ち負けだけではなく、個々の勇敢さなども審査対象としている」
「勇気ある戦略的撤退っていう風には捉えてもらえないっすか?」
「逃げ場のない『追い詰められた状況』でも、勇気を出せるかどうか……それが今回の採用基準だ。そうでなければ、魔王に……ぁ、いや、これ以上は禁則だ」
「あ、そうですか……はい、わかりました……はぁ」
ため息をつきつつ、ボクは、黒猫の99番と正面から向き合う。
さあ、はじめようか。
なるべくケガをしないよう、細心の注意を払いつつ、綺麗に負けるという、しょうもない闘いを。
「それでは、はじめ」
審判の合図と同時、
ボクは、
「いでよ、我がエース!! ゴブリン1号!!」
初手から切り札を出していく。
まあ、これ以外に手札がないんだけど……
「ゆけぇええ! そして、黒猫の99番を血祭にあげろぉお!!」
ボクの命令に従い、ゴブリンが勇敢に突撃していく。
なんという雄々しい姿だろうか。
みんな、見てくれ。
ウチのエースを!
みんなで喝采を送ろう!
そして讃美歌を――
「邪魔」
一瞬で吹っ飛ばされた。
何が起こったのか、いまいちわからなかったぐらい、一瞬。
見ろ……ゴブリンがゴミのようだ……
「まあ、わかっていたけどねぇ……ボクのゴブリンが相手になるワケないよねぇ。『切り札は先に見せるな、見せるならさらに奥の手を持て』という格言があるけれど……それに従うべきだったなぁ。いまさら言っても、後の祭だけどねぇ」
と、ボクが試合後の感想戦&自省をしていると、
黒猫の99番が、ゆっくりと近づいてきて、
「心配するな。二回戦に影響が出ないように気絶させる」
「あざます」
そして、ボクの意識は途切れた。
★
目が覚めた時、
「猿の17番! 前へ! いないのか! 猿の17番!!」
ちょうど、審判が、ボクの名前を呼んだ。
完璧なタイミングの目覚め。
ボクはフラつきながらも、
「は、はいはい、いきます! やります!」
なんとか、対戦相手の前に立つボク。
今回の相手は、『虎の30番』。
この前の大会で戦い……そして勝った相手。




