148話 どっちが本体なのかという哲学的難題。
148話 どっちが本体なのかという哲学的難題。
99番の、ゴミを見る目が、ボクの心に突き刺さる。
ボクは軽くムキになって、
「ボクがアバターラの分身なんじゃなく、アバターラがボクの分身なんだよ。ボクが本体で、あいつはただの分身。ここテストに出るから、覚えておくように」
「……あっちが本体だったら良かったのに……」
と、心底、がっかりしたような、呆れたような、そんな口調で、ボソっとつぶやいてから、
「今回の採用試験に受かった場合、『魔王討伐隊』のメンバーになる。ラストローズ辺境伯が、先日、新たに開設したばかりの組織。字面だけでも分かると思うが……魔王討伐隊の主な任務は、この巨大都市ユウガ内部に出現した魔王を殺すこと」
「ああ……なるほど……まあ、あんなことがあったんだから、そういう流れになりますよねぇ……」
と、先日の『ゼラビロス』VS『地下迷宮研究会』の闘いを思い出しながら、ボソっとつぶやくボク。
99番が、たんたんと、
「……魔王討伐隊の中に、『魔王使いのサポーター』である私がもぐりこむことは、アバターラにとってメリットが非常に大きい」
「そうっすね。魔王討伐隊の内情とか動向とかを教えてもらえると、正直、非常に助かります」
「アバターラは顔が割れているらしいから、討伐隊の内部にもぐりこむことはできない……しかし、お前なら問題はない」
「ですね。本体であるボクと、サポーターであるあなたが、どちらも魔王討伐隊になれば……アバターラは、かなり動きやすくなる」
「そういった諸々を踏まえて、応募してきているのであれば、流石、アバターラの分身だ……なんて風に思っていたのだが……まさか、何もわかっていなかったとはな……見た目と中身通りの、ただのバカとは……」
また、心底から呆れかえったような口調。
……正直に言おう。
ボク、この人、嫌い。
「あのねぇ、99番さんよぉ……何回でも言うけど、ボクはアバターラの分身じゃない。アバターラがボクの分身なんだ。二度と、間違えないように」
そう言ったボクに、頭を抱えている99番が、
「お前は、アバターラが分身だと思い込んでいるだけで、本当は、お前がアバターラの分身なんじゃないか? だっておかしいだろう? 分身の方が有能というのは」
「うぐっ……そ、それを言われると辛いけど、でも、実際――」
「アバターラは、高潔で、思慮深く、何より強かった。肉体強度は、確かに、お前と大差ないように見えたが……心と魂が『強靱』だった」




