146話 黒猫の99番。
146話 黒猫の99番。
「確か、存在値70ぐらいあるって噂だ」
言われて、ボクは、神眼モノクルで、99番を見てみた。
存在値72だった。
……つ、強ぇぇ……ボクのちょうど8倍。
存在値72というと、『蝙蝠の7番』や、『針土竜の3番』と同じぐらいの強さだ……
存在値9のボクとはえらい違い……
「17番……お前、モノクルなんて使っていたっけ?」
「この前、買った。ボクもブルジョワになったから、それに見合うオシャレをしないといけないからね。どう? カッコいいだろう?」
「そのセンスは、分からないな……」
「おいおい、そんなモノ欲しそうな目で見て……仕方ないな。ボクと君の仲だし、特別に100万で売ってあげよう」
「同期をボッたくろうとするな。だいぶ凝った造りなのは認めるが、流石に100万はしねぇだろ」
「何言っているんだ。これの価値を考えれば1億でも安いぐらいだよ」
「……1億なめんな」
ゴミを見る目でそう言ってから、20番は続けて、
「お前、マジで黒猫の99番のこと、知らないのか? だいぶ有名人だぜ……てか、俺、前に、99番のウワサを、お前に話したことがある気がするんだけど」
「おいおい、20番。ナメるなよ。お前との会話なんて、全部、右から左に決まっているだろ」
とか言いつつも、ボクは、そこで思い出す。
そう言えば、確かに、2~3か月ぐらい前、闘技場の控室で、20番から『黒猫の99番』のウワサを聞いた。
裏社会の用心棒で、『反社の猫』みたいなあざ名で呼ばれているとかなんとか……
思い出しつつ、黒猫の99番を見つめていると、
そんなボクの視線に気づいたのか、99番が、ギロっとこちらに視線を向けた。
怖い目……
最初は『華奢なヒョロガリだ』と思ったけど、よく見たら、暗殺者のオーラが、ガンガンに出ていた。
漆黒の衣装に身を包んだ闇の住人。
その服装は、幾何学的に切り裂かれた黒布が幾重にも重なり合い、どこか儀式めいた不気味さを醸し出している。
全身から漂う刃のような静謐さ。
影のように滑らかなたたずまい。
鋭く逆立った『碧がたゆたう髪』に、冷たい光を宿した切れ長の瞳。
『雰囲気が怖すぎるので、関わらないでおこう……』と思ったのだが、
なぜか、99番が、音もなくこちらに近づいてきて、
「……おい、そこのお前! こっちこい!」
と、ボクに向かって、指をクイクイしながら、
控室の方へと歩いていく。
その光景を見て、猿の20番が、
「あーあ……お前が失礼なことを言うから、お怒りを買ったぞ」




