145話 就職活動。
本日の2話目です。
145話 就職活動。
「採用試験は今日の午後だから、そのまま指定の場所に向かってくれ」
「テンポいいっすね。尺の足りないアニメみたい」
「は?」
「聞き流してください。ちなみに、仕事内容は?」
「内容は公になっていない」
「えぇ……それ、なんかちょっと怖いっすね。もしかして、反社の仕事じゃ……」
「いや、公務案件だ。責任者はラストローズ辺境伯閣下。……詳しくは知らないが、発注書を見る限り、限りなく『真っ当』だと思ってもらって構わない」
「……ラストローズ辺境伯が募集をかけている仕事……っすか……ほう……」
となると、魔王関係……かな?
などと推測しつつ、ボクは、担当者から言われた場所へと向かった。
★
指定された場所は『闘技場』だった。
今日は、どの大会も開かれていないはず。
……だから、かな。
ここは広いし、体力テストとかをするにもうってつけ。
控室やVIPルームを使えば、ペーパーテストとかもできるし……
なんて思いながら、中に入る。
見慣れた闘技場の空気。
砂の匂いが鼻に刺さって、石壁に跳ね返る声が全体に響く。
ここには、ボクと同じ『受験生』と思われる人たちが100人ぐらい集まっていた。
みな、屈強な肉体をしている。
ボクみたいな弱そうなやつはそんなにいない。
ゼロじゃないけどね。
割合としては100人中5人ぐらい。
100人前後の受験生の中には、見知った顔もちらほらいた。
『闘技場で戦ったことがある人』とか、『ポルのオッサンの知り合い』とか。
――と、そこで、
「よう、猿の17番。お前もきていたのか」
話しかけてきたのは、ボクと同期(同い年)で、この闘技場で何度も戦ったことがある『猿の20番』だった。
ひ弱な召喚士のボクとは違い、20番は、武道家タイプでタフな野郎。
「17番よぉ……お前じゃ採用試験に受からないだろ。今回の募集は、たぶん、力仕事だぜ。見てみろよ、まわりを。みんな、前衛タイプだ。力仕事を担える人材が集まっている感じだな」
「……ボクみたいな後衛職っぽい人も、5人ぐらいいるけど? ほら、あっちの人とか、あっちの女子とか」
目につく範囲にいる『相対的ヒョロガリ』を指さしながらそう言うと、
「あの人らは、回避タンクとか暗殺とかの『軽業』を担当しているから『細身』ってだけで、一応、みんな前衛職だぞ」
「え、そうなの?」
「この中で、ゴリゴリの後衛職はお前だけ」
「……マジかよ」
「特に、お前がユビさした、あの女……『黒猫の99番』は、裏社会ではかなり有名なアサシンだぞ。確か、存在値70ぐらいあるって噂だ」




