136話 スペシャル。
136話 スペシャル。
(スペシャルぐらいはボクも知っているよ、バカにしてもらっちゃ困る)
ボクはスペシャルを持っていない。
だから、その点に関しては、バカにされても、甘んじて受け止めるほかない。
ちなみに、スペシャルは、それぞれが保有している特別な資質のこと。
品質が高いものはプラチナスペシャルとか、ゴールドスペシャルと呼ばれる。
普通品質のものは『ブルースペシャル』と呼ばれ、その中でも階級があって、『ブルーの中で一番上のランク』が『ブルースリー』だったかな。
確か、ポルのおっさんが、『俺のスペシャルはブルースリーだ』って自慢していたような気がする。
あのオッサンの話は、全部、話半分以下でしか聞いていないから、間違っているかもしれないけど。
ちなみに、『ラストローズ辺境伯がゴールドスペシャルを持っている』というのは聞いたことがある。
やはり、貴族ともなると、スペシャル一つとっても格が違うらしい。
プラスの資質だけではなく、
当然、マイナスの資質も存在している。
『朝起きられない』とか『下痢しやすい』とかがレッドスペシャル。
ボクは、ブルーのスペシャルをもっていないけど、レッドのスペシャルも持っていない。
その点は自慢だ。
……な、なんて程度の低い自慢なんだ……
(ちなみに、モンジンは? スペシャルをもっているの?)
(すげぇプラチナスペシャルを山のようにもっていた気がするが……覚えてねぇ)
(相変わらず、都合のいい記憶だねぇ。……君が本当にプラチナを持っていたかどうかはともかくとして、君が、自己肯定感強めのメンタル強者だったことだけは間違いないね)
(確か……『人間失格』みたいな名前のスペシャルをもっていた気がするんだが……)
(それは確実にレッドスペシャルだね。……おそらく、『頻繁に自殺したくなる』っていう感じの特質だと思う。もしくは『モルヒネを打ちたくて仕方なくなる特質』かな。どっちにしても、最悪すぎて草も生えない)
などと中身のない会話で現実逃避している間に、会議がある程度まとまった。
まとまったというか……今後の方針が決まった感じ。
これまでは目撃証言が乏しく曖昧だった「都市内部で魔王が暴れた」という事件が、いまや動かぬ事実として認定され、早急に対処すべき重大問題と結論づけられた。
そして、
『連れ去られた5番』と、
『道徳の奴隷と名乗った魔王使い』の捜索を開始するという話になった。
専用の部隊が創られるかも……という話もしていたが、その辺のあれこれは、上と相談してからになるそうだ。




