133話 僕は絶対に正しい。
133話 僕は絶対に正しい。
流石のゼンドート伯爵も、逃げた魔王を追いかける気はないようで、
「ぐ……ふっ」
その場で膝から崩れ落ちた……が、すぐに気絶はせず、
這うようにして、斬り飛ばされた右腕を回収し、
「け、欠損治癒ランク7……」
どうにか回復魔法で、右腕をくっつけると、
「僕は……負けない……僕は……絶対に……正しい……っ」
そこで、ついに、バタっと気絶した。
なんてしぶとい人間なんだと素直に感嘆する。
その生命力と嫌悪感は、まるでゴキブリ。
気絶したゼンドート伯爵を見つめていると、
そこで、モンジンが、
(そのバカ、いまのうちに殺しておいた方がいい。ゼンドートはマジでヤバい。性格もそうだが、なによりスペックが高すぎる。……こんなのに生きていられると邪魔すぎる)
(え、いや……でも、殺すのは……)
(マパネットを召喚して植物人間にしろ。ヤクザ相手にやっただろ)
(ああ……それだったら、まあ……)
そこで、ボクはモンジンの提案に従い、マパネットを呼び出す。
誰かに目撃されないよう、念のため、小さなリスの状態で召喚して、
ゼンドート伯爵に、植物人間ウイルスをぶちこんでもらうことにした。
決断した直後、足元で、どこからともなく現れたどんぐりが、コロっと転がる。
次の瞬間、それがパカっと割れて――中から、葉っぱの迷彩マントを羽織ったリス型マパネットが登場。
マパネットは、ディ〇ニー映画みたいな機敏さで、崩れたガレキの影に隠れつつ、ゼンドート伯爵に、植物人間ウイルスをぶちこんでいく。
動きが、あまりにも老舗アニメーションすぎて、ついほっこりしてしまう。
君に、そんなマスコット的なポジションは求めていないのだけれど……
……なんてことを思いつつ、
ボクは、『植物人間になったゼンドート伯爵』を見つめながら、
(……ぁ、あんな、漫画でもなかなか見ないような人間が実在するとは……びっくりだよ。どういう環境で育ったら、あんな風になるんだろ……)
(あそこまでいくと、むしろ、環境は関係ないだろうな。あいつ自身の核に刻まれた性根の問題だ)
(……ところで、5番姉妹のこと、どうしようか……ボク、自分と9番を守るだけで手一杯なんだけど……)
(そこはもう、頑張るしかないだろ。気合いだ、気合いだ、気合いだ)
(気合いで解決できることって、君が思うほど多くないと思うよ)
★
小一時間ほど、ボクは、この場で気絶したフリをし続けた。
さっさと誰か起きてくれないかなぁ……と思いつつ、ダランと力なく寝転がっている。
正直、だいぶしんどい。




