・センエース誕生日記念のプラスアルファ
「誕生日だからって、一緒に踊ってもらえると思わないでくだちゃい」
「なんも言うとらんがな」
「なんで、この『世界一の女神』であるオイちゃんが、お兄なんかのために正装しないといけないんでちゅか。ふざけないでくだちゃい!!」
「……なんで、誕生日に、理不尽極まりないバチ切れをくらわにゃならんのだ……」
「毎年、毎年、誕生日のたびに、朝から晩まで、買い物だの、食事だので拘束されて、たまったもんじゃないでちゅ! オイちゃんは、絶対にお兄を許さない! 絶対にだ!」
「俺から頼んだことは一回もないんだけどなぁ」
「なんでちゅか、その言い草! まさか、迷惑だとでもいう気でちゅか! くびり殺しまちゅよ!」
「……いや、ありがたいとは思うんだけど……毎年、毎年、絶対に、この謎の罵声から始まるのがなぁ……」
「お兄は、本当に、幸せ者でちゅねぇ。オイちゃんほどの女神に毎年祝ってもらえて。あー、うらやましい」
「2垓年も生きていると、誕生日とかどうでもよくなるけどなぁ……」
「この何より大事な日を、どうでもいいなんて絶対に言わせない! 絶対にだ!」
「何より大事な日ではねぇ。確実に」
「今日という日は、『お兄のすべて』よりも、大事なんでちゅよ!」
「……『俺の全部』というファイルの中には、『俺の誕生日(今日)』が含まれているんですが、それは……」
「でも、実際、センエース生誕祭は、世間的には、一大イベントでちゅよ。第2~第9アルファのあらゆる場所で、大規模な聖誕祭が開かれていまちゅ」
「それ、ほんと勘弁してほしいぜ、マジのガチで。世界規模の誕生祭なんて、クリスマスだけで十分だってのに……」
「あっちもこっちも浮足立って……この超大規模・聖誕祭と比べれば、『第一アルファのクリスマス』なんて『田舎の盆踊り』みたいなもんでちゅ」
「その例えは、ちょっとよくわからんが……」
「オイちゃんも鼻が高いでちゅよ。自分の弟子が、こんなにも、みんなから愛されて。ま、『一般民衆の、お兄に対する愛』なんて、『オイちゃんの愛情』と比べれば、『田舎の盆踊り』みたいなものでちゅけど」
「その天丼は、あまりにも高度すぎて、俺では、とてもじゃないが、さばき切れないねぇ。どういう意味か、解説お願いしてもいいすか?」
「それが分からないから、お兄はいつまでたっても童貞なんでちゅよ」
「絶対に関係ねぇだろ」
「めちゃくちゃあるだろうがぁ、ぼけぇ、かすぅ!」
「すげぇキレるじゃん……誕生日の主役相手に……我、本日の主役ぞ」
「キレてないでちゅよ、オイちゃんをキレさせたら大したもんでちゅよ」
「お前、実際、『他人に感情をむき出しにしたりしない女』なのに、俺に対しては、頻繁にキレるよな。なんでなん?」
「決まっているじゃないでちゅか。お兄のことが、世界で一番嫌いだからでちゅよ」
「知らんと思うけど、実は俺、今日、誕生日だから、あまり強い言葉で傷つけないで。せめて、今日ぐらいは優しくして」
「オイちゃんのかわりに、みんなが、盛大に祝ってくれているから、それで十分でちょう。これほどの規模のお誕生日会を開いてもらえる男は、いくら世界広しといえど、流石に、お兄だけでちゅよ」
「……『誕生日を祝日にされる』という、この『高度すぎるイヤがらせ』、マジで、どうにかやめさせたいんだけど、どうしたらいいかな?」
「どうしようもないと思いまちゅよ。というか、今後、どんどん、ゼノリカの支配領域が拡大していくから、やめさせるどころか、確実に膨らんでいきまちゅ。やったね、センちゃん、聖誕祭の規模が増えるよ」
「あのゼノリカとかいう反社組織、マジで、イカれているよな。なにが世界政府だ。どの角度から見ても、異常カルト集団でしかねぇ。……エグいイヤがらせばっかりしてきやがって。『地上げしているときのヤクザ』よりもタチが悪いぜ。こうなったら、もう、殲滅するしかないか……」
「いいでちゅね。やりまちょう。今すぐやりまちょう。汚物は消毒だ! ゼノリカなんてクソくらえ」
「……世界一のレディが、そんなお下品な言葉、つかわないの」
「お兄に協力するとか、ヘドが出まちゅけど、ゼノリカを壊滅させるときだけは、全力で手を貸しまちゅから。期待していてくだちゃい。オイちゃん、マジでゼノリカのことが、死ぬほど嫌いでちゅから」
「一つ確認なんすけど……『俺にもしものことがあったら、姉さんがゼノリカのトップを担う』……っていう約束、覚えてますよね?」
「え? あー……あー、はいはい、なんか、『それに近いようなこと』を、どこかで誰かに『言われたような気がしなくもない』でちゅけど、でも、まあ、錯覚でちょう」
「俺の『人生をかけた願い』を、錯覚で片付けないでよ、マイマスター」
「そんなことより……さあ、踊りまちゅよ」
「盆踊りを?」
「知っていまちゅか、お兄。どうやら、本来の盆踊りは、乱交パーティ的なエロイベントらしいでちゅよ」
「ぁあ、その逸話なら聞いたことがあるな」
「オイちゃんとマンツーマンで乱パしたがるなんて、どういう神経しているんでちゅか! 師匠の顔が見たいでちゅよ! この変態! 鬼畜! ロリコン!!」
「……まず、タイマンで乱パできねぇだろ? で、俺の師匠は、あんただろ? で、姉さんは、峰不○子が五度見する長身ボンキュッボンだから、姉さんとの情事を望んでもロリにはならんよね。……多いよぉ。さほど長くもないセリフの中に、山ほどのボケを詰め込まないでよぉ……」
「今日が誕生日で幸いでちたね。そうじゃなかったら、不敬罪で殺しているところでちた。良かったでちゅね、首の皮一枚繋がって。慈悲深いオイちゃんに感謝しながらクツをナメなちゃい、このブタ野郎」
「……なんで、俺、こんなに嫌われてんだろう……ここまで嫌われるほどの事はしていないはずなんだけどなぁ。姉さんのことを命がけで助けたことはあっても、嫌われることは一つもしてないはずなんだけどなぁ」
「お兄、誕生日プレゼントとして、特別に、何でも言う事聞いてあげまちゅけど、どうしまちゅ?」
「え、マジ? じゃあ、俺が死んだらゼノリカのトップになるという約束を思い出して」
「くそがぁあ!!」




